北朝鮮メディアでは故・金日成主席の誕生日「太陽節」にあたる4月15日に向けて、祝賀ムードを盛り上げようとする報道が相次いでいる。国営・朝鮮中央テレビは祝典の準備の様子を連日のように伝えており、当日には特番も放送する。
一連の報道には、金日成・正日親子を称賛する内容も多いが、その中には、金正日総書記の「ジャンパーファッション」が「世界的に大流行している」と伝える、荒唐無稽なものすらある。
「人々にとって最高に価値があって高尚で上品なもの」
このエピソードが紹介されているのは、北朝鮮の事実上の公式ウェブサイトである「わが民族同士」に掲載された、2010年4月7日付けの「労働新聞」の記事だ。記事は、「惑星もおどろく偉人称賛ブーム」と題して掲載されたもので、大きく3つの逸話が紹介されている。
記事冒頭には01年に金総書記がロシアを訪問した際のエピソードが紹介されている。要約すると、「大雨が降っていたのに、金総書記が現れると急に晴れ、現場から去ると再び雨が降り出した」というもので、金総書記一行のメンバーは
「あなたは太陽をポケットの中に持っていて、必要な時に取り出して照らすことができるのです」
などと称賛したという。北朝鮮では、ほとんど「神」として崇拝していることがよく分かる話しだ。
2つめのエピソードは、米政府の国際放送局「VOA」が97年10月に、金総書記のことを
「これまでに世界が見たことがない特別な政治指導者で、驚くほど社会主義に対して絶対的な信念と忠実心、強靱な精神を持った社会主義政治家・軍事家であることを認めざるをえない」
などと絶賛したというものだ。北朝鮮メディアにとって、このような荒唐無稽なエピソードは決して珍しいものではない。だが、3番目の、金総書記にとってはおなじみとも言える、ジャンパー服姿に関するエピソードは、驚くべきものだ。
記事では、「地味なジャンパー服が、今は人々にとって最高に価値があって高尚で上品なもの」とした上で、
「不滅の世界史的業績を成し遂げられながらも、高尚で平凡なものを好む偉大な将軍様の人格が、世界に『金正日式流行』を呼び起こしている。偉大な将軍様が着ておられるジャンパー服だけでなく、身の振り方と表情、手ぶり、そして筆跡に至るまで、世界の人々は魅力を感じて従おうとしている」
などと持ち上げている。