トヨタは「代替休暇」導入せず
ある労働組合の幹部は、「労使協定を結んだからといって、いざ運用が始まったらどうなるかわからない。結果的に社員は残業代ももらえないし、休みも取れないということにもなりかねない」と心配する。同じ思いの従業員は多いかもしれない。
厚生労働省は、「代替休暇は1か月60時間を超えた月末の翌日から、2か月以内に取得する必要がある。また残業代を全額受け取るか、代替休暇を取得するかは社員の意思による」と、必ずしも企業に優位な制度ではないという。
これから労使協定を結ぶ企業が少なくない中で、トヨタ自動車労働組合は会社側との協議を経て、50%の割増賃金(残業代)をもらうことで決着した。代替休暇の導入は見送った。
トヨタ労組は、「年次有給休暇に合算できるとはいえ、時間単位で取得する代替休暇は職場になじまない。工場などの生産ラインは休みがとれる部署とそうでない部署が出てきて、かえって不公平になる」(労組幹部)と、見送りの理由を説明する。また、残業時間を増やさない制度として、すでに休日出勤の「振替休日」を用意しており、取得している人がいることもある。
トヨタ労組は「残業代というのは、働いた分きちんと賃金でもらうもの」としている。