大手鉄鋼は製品値上げに向かう
増加する負担分を誰がかぶるか。大手鉄鋼は鉄鋼製品を値上げして負担を転嫁したい考え。すでに鋼材問屋むけには4月出荷分から20%程度の値上げを実施。さらに相対取引の大口ユーザーである自動車、電機とも交渉を進めているが、先行きは不透明だ。資源価格が過去最高になった08年度は、リーマンショックまでは自動車、電機は比較的好調で、トヨタが07年度比約3割の値上げを飲むなど、一定の値上げを受け入れる余裕がユーザー側にあった。ところが今回は大幅赤字が続出し、コスト削減に血眼になっており、簡単に値上げを受け入れるわけにはいかない。
デフレの日本で、資源価格上昇に伴い物価がプラスになれば、デフレ退治にプラスのようにも思える。だが、デフレは需要不足(供給過剰)が主因。雇用不安や賃上げ低迷などで需要回復が見込めなし中で原材料だけが海外要因で値上がりするのは「悪い物価上昇」。需要不足だから、結局、小売価格は上げられず、生産・流通のいずれかの段階で資源高の分を吸収するしかない。実際、中小企業の多くが原料価格を価格に転嫁できず、むしろ一層の価格引下げを求められるという板ばさみに苦しんでいる(信金中金総合研究所などの分析)。
資源価格上昇は、低迷する日本経済に一段と打撃になるのは間違いない。