「文化の殿堂」厚生年金会館閉鎖 東京、大阪それぞれの「運命」

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   東京や大阪など全国各地の厚生年金会館の多くが2010年3月末で惜しまれながら閉館となった。東京都新宿区の東京厚生年金会館(ウェルシティ東京)は49年の歴史に幕を閉じ、歌手の松山千春さんがファイナル公演を行った。大阪市西区の大阪厚生年金会館は地元出身のロックバンド「SOPHIA」が大トリを務め、42年の歴史にピリオドを打った。

   いずれの厚生年金会館も、これまで数々のコンサートなどが開かれ、「文化の殿堂」として多くのファンに親しまれてきた。閉館後は民間に売却されるが、その後の行方は様々だ。

東京は建物取り壊し、複合型の商業施設がオープン

   全国の厚生年金会館は、年金資金のムダ使い批判が高まった小泉政権下の2004年、政府・自民党が6年以内の廃止または売却の方針を決めた。厚生年金会館や宿泊施設「サンピア」などの年金福祉施設には多額の年金保険料がつぎこまれたが、赤字が多く、「年金のムダ使い」との批判を浴びたためだ。

   大規模年金保養基地「グリーンピア」や社会保険庁に対する批判とともに、年金福祉施設の廃止・売却はとんとん拍子に進んだ。

   廃止・売却が決まった厚生年金会館の中には、大阪のように黒字経営だった施設もあった。東京都、大阪市だけでなく、札幌市や北九州市など各地の厚生年金会館は地元屈指のコンサートホールを有し、一流のアーティストがライブを行うなどしていたため、各地の音楽ファンの間に存続を求める声が起きた。

   ところが、政府方針は冷酷で、予定通りの入札が行われた。その結果、東京厚生年金会館を落札したのは、家電量販店大手のヨドバシカメラだった。ヨドバシカメラは厚生年金会館を所有する独立行政法人「年金・健康保険福祉施設整理機構」(RFO)から2010年2月、120億円で落札した。ヨドバシカメラは4月30日までに物件の引き渡しを受けることになっているが、買い取り後は現在の建物を取り壊し、複合型の商業施設をオープンさせる予定で、カメラ博物館やギャラリーなども併設するという。

大阪の大ホール(2400席)は改修して生き残る

   一方の大阪厚生年金会館はオリックス不動産が09年10月、36億円で落札。オリックス不動産と言えば、かんぽの宿の入札疑惑で物議を醸した業者として知られるが、大阪厚生年金会館にも名乗りを挙げ、落札した。オリックス不動産は地元の要望に応える形で、大ホール(2400席)を改装し、2011年秋をめどに再オープンすると発表。大ホール以外のホテルなどの施設は取り壊し、分譲マンションにするという。

   大ホールをめぐっては、大阪市が1000席を超すホールの設置などを条件に、建築物の容積率を引き上げるなど落札業者に対する優遇策を示していたただけに、ホール存続は市民に朗報だ。新たなホールの名称などは今後決まる。分譲マンションの規模や景観などの「詳細は未定」という。全国の厚生年金会館は今後、様々な運命をたどりそうだ。

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