会社更生手続き中の日本航空(JAL)をめぐる「社内資料」とされる文書が永田町やマスコミ関係者の間で出回っている。資料は「団体航空券の販売額の大半が旅行代理店にキックバックされている」という内容なのだが、JAL側はその内容を完全否定。JALに対し「公的資金を使ってダンピングをしている」との批判が加速しているだけに、同社は根拠不明な怪文書に頭を痛めている。
文書は、JALが会社更生法の適用を申請した2010年1月下旬から、永田町に「JALの社内資料」として出回りだしたといわれる。
運賃9900円に対し、キックバックが8100円??
「日本航空の販売施策の現状」と題して、パワーポイントを使用したとおぼしき体裁でA4用紙1枚にまとめられている。資料では「個人航空券」と、団体客向けを指すとみられる「旅行航空券」の2項目について説明されている。特に目を引くのが後者だ。
資料では、旅行代理店の種類を「大手旅行会社」と、CMを大量に出稿する「メディア系旅行会社」に分類。後者について
「以下がメディア旅行会社に提示されている09年度下期の施策内容(例)である」
として、キックバックの割合を示した表が付いている。その内容が驚くべきものだ。例えば「東京~道東(釧路、女満別など)」では、適用運賃額9900円に対して、キックバック額は8100円。また、「東京~九州」では、運賃1万3000円に対してキックバック額は7500円だ。仮にこれが本当だとすれば、JALの実質的な収入は、運賃額の2~5割ということになり、まさに「投げ売り状態」だ。
この資料の内容についてJAL広報部に確認を求めたところ、
「文書は日航の内部資料ではなく、キックバックの額も全くのでたらめです」
と、内容は事実無根としている。
同社では、キックバックの具体的な額や割合については非公開だとしているが、旅行業界関係者によると、同社が旅行代理店に対して行っているキックバックの割合は、平均で約1割。さらに、同社の航空券の売上金額に対して団体航空券が占める割合は2~3割なので、航空券全体の売り上げに占めるキックバックの割合は、せいぜい2~3%だ。また、資料中の「旅行航空券」という用語はJAL社内では使われておらず、JALの社内用語は「団体航空券(団券)」なのだという。