大手百貨店の高島屋と、阪急阪神百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングが経営統合を断念し、規模の拡大で生き残りを目指す百貨店業界の再編が必ずしもうまく進まない実態が浮かび上がった。
高島屋と阪急阪神百貨店はいずれも収益性が高い「勝ち組」企業で、店舗再編や商品戦略の主導権をめぐり、お互いに歩み寄れなかったようだ。
若手社員参加の阪急阪神に対し高島屋は年配役員
ユニクロに代表される量販店の台頭で売上高の減少が続く百貨店業界は、2007年9月に大丸と松坂屋がJ・フロントリテイリングとして経営統合。08年4月には三越と伊勢丹が三越伊勢丹ホールディングスを結成するなど、大型の経営統合が進んだ。これらの統合は「勝ち組み」百貨店が、経営不振に陥ったライバルを救済する色彩が強かった。
これらの動きに対抗する形で、それまで売上高でトップだった高島屋は、関西地盤の阪急阪神百貨店と08年10月、11年度中に経営統合することで合意。株式を相互に10%ずつ持ち合い、統合に向けた協議を進めてきた。
ところが店舗再編や商品戦略をめぐり、その後の交渉は進まなかった。全国の主要都市に店舗を構え、中高年層が顧客基盤で高級路線の高島屋と、関西地盤の電鉄系百貨店で、若者ファッションなどに強いH2Oの考え方は開く一方だった。両社は「業務提携委員会」と呼ばれる組織をつくり、精力的な交渉を続けたが、「若手社員も参加する阪急阪神に対して、高島屋は年配の役員クラスが並ぶなど、両社の企業文化、体質の違いが浮き彫りになった」(関係者)という。
昨年後半から交渉は行き詰まり、3月19日に両社のトップが会談し、統合を白紙撤回することで「自然に合意し、異論はなかった」(同)という。当面、両社は株式の持ち合いを維持したまま、資材の共同購入など業務面での提携は続ける方針という。しかし、百貨店は少量生産で付加価値の高い商品が多く、スーパーマーケットや量販店に比べると大量仕入れなど規模のメリットが生かせないとの指摘もある。