日本でも閣僚がツイッターを利用する例は少なくないが、米国ではさらに一歩進んでいる様子だ。ホワイトハウスのスポークスマンが、次々に大統領の日程をつぶやいているのだ。中には、外遊の延期や、予告無しの「電撃訪問」といった重要事項の発表も含まれている。
早速、米国内では「誤報を呼ぶおそれがある」などと野党やメディアから批判の声もあがっている。
「第1報」がツイッターで流れる
オバマ氏側近でツイッターを利用する人は多いが、中でも注目を集めているのが、ツイッターで「@PressSec」というアカウントを持つロバート・ギブズ報道官だ。ギブズ報道官は2010年2月13日にアカウントを取得したのだが、ツイッターを始めて約1か月がたった3月12日の書き込みが波紋を呼んだ。
「大統領はインドネシア・オーストラリアへの歴訪を日曜日(3月21日)に延期します。ファーストレディーと娘さんは同行しません」
国内で懸案になっていた医療保険改革法案の審議に集中するための措置だが、外交日程の変更という重要な事柄が、ツイッターを通じて発表されるのはきわめて異例だ。
実は、09年7月にも、ホワイトハウス関連のアカウントが、オバマ大統領の記者会見について「第1報」を流したことはあった。だが、この時は通常のプレスリリースでも発表が行われたため、大きな混乱はなかった。ところが、この歴訪の延期についてはそうではなかったため、記者会見の場では、
「(マスコミに対して)主要な事柄を伝えるにあたって、あなたはツイッターという手段を選ぶのか」
などと疑問の声が相次いだ。
これに対して、ギブズ報道官は「ホワイトハウスのメールの調子が悪かったため、ツイッターを使った」などと釈明したが、逆に「第一報(breaking news)については、もっと頻繁に利用する」とも述べた。さらに、ギブズ報道官のアカウントは、ツイッターの運営側が本人確認をしたとされる「認証済みアカウント」なので、しばしば指摘される「なりすまし」のリスクも比較的低いとみて良い。また、ホワイトハウスでは、
「ツイッターでのつぶやきは、職務の一環なので、公文書として保存される」との見解を示してもいる。
次々に大統領の動静を書き込む
このような「追い風」を背景に、ギブズ報道官は「つぶやき」の回数を増加させており、現段階でのつぶやきの回数は3100回以上。重要事項の発表も多い。
3月29日0時50分過ぎ(日本時間)には、
「大統領は、軍の視察とカルザイ大統領と同内閣との会談を目的に、たった今アフガニスタンに到着しました」
と書き込み、オバマ大統領のアフガニスタンへの事前発表なしの「電撃訪問」を明らかにした。これが厳密な意味での「第1報」かどうかは定かではないが、この「つぶやき」の数分後に、ニューヨーク・タイムズやCNNが、続々とツイッターで速報を流した。
さらに、ギブズ報道官は、現地でも
「大統領とカルザイ氏の会談に閣僚が加わりました。大統領は、カルザイ氏が5月12日にワシントンを訪問することを発表しました」
「大統領は、主な訪問の理由は『米軍の多大な努力に、ただ感謝を述べることだ』と述べた」
などと、次々に大統領の動静を書き込んでいる。マスコミを通じない広報戦略を模索していることでも知られるオバマ政権だが、今後もツイッターの利用が加速する可能性は高そうだ。