大手紳士服チェーンや低価格カジュアルブランドのテナント導入など百貨店の高級イメージを塗り替える改革を続ける大丸松坂屋百貨店が、今度はテレビ通販との協力を模索し始めた。主力店の一つ、東京駅八重洲口の大丸東京店で2010年3月中旬、テレビ通販大手ジュピター・ショップチャンネルの生中継があり、視聴者の大反響を呼んだ。
「いよいよ始まりました。ショップチャンネル・フロム・大丸東京店」――。3月19日午後、同店5階にある女性ファッションブランド「アンタイトル」の売り場。女性司会者が弾んだ声でテレビカメラに呼び掛けた。
1万290円バッグ開始10分以内に売り切れ
「この商品は春らしくはっきりした色合いです」「サイズも豊富にそろっています」――。同ブランドを運営するアパレル大手、ワールドの担当者が、大丸東京店で先行発売したばかりのワンピースを手に取り、商品をPR。司会者も、ワンピース、カーディガン、バッグなど紹介した商品の注文状況を刻々と視聴者に伝え、「残りあとわずかです」と購買意欲をかき立てる。
大丸東京店の担当者によると、1万290円のバッグは番組開始10分以内に売り切れた。「予想以上の反響。売り上げのペースは通常の店舗の10倍以上でしょう」と驚く。
そもそもテレビ通販は、インターネットショッピングと並び、08年後半からの消費不況下でも売り上げ増大が続く数少ない成長分野の一つ。不況による消費者の「巣ごもり現象」を追い風に、店舗販売を主力とする百貨店やスーパーの客足をにぶらせたライバルだ。
店名が連呼され、来店客が増加?
今回の通販による売上高は、ジュピターに帰属し、大丸東京店への直接の利点はない。だが、大丸松坂屋百貨店の幹部は「1時間の番組で常に店名が連呼されており、視聴者が実際に店で商品を手にとって確かめたいという需要は必ずある」と来店客の増加に期待する。いわば「店内に敵を呼び込んで、『二匹目のドジョウ』を狙う」(担当者)試みだ。
通販業界が実際の店頭から客足を奪う従来どおりのゼロサムゲームが続くのか。それとも両者が「ウィン-ウィン」の関係を構築できるのか。同社は今後もジュピターとの協力を定期的に続けるといい、関係者は成り行きを注目している。