郵政改革案を巡り、「閣内不一致」が激化している。改革案を首相が「了承した」か「了承しない」かで、亀井静香郵政改革・金融相と鳩山由紀夫首相側とで、ことごとく意見が食い違っているのだ。「水掛け論」ともいえ、混乱に拍車がかかっている。
両者の対立が表見化したのは、2010年3月25日夕方の首相の囲み取材だ。首相は、
「私が了解したと伝えられているが、実際には了解ではない」
「まだ限度額など決定している話ではない」
などと亀井氏に対して不快感を示した。
調整はきっちりし、プロセスも踏んでいる
当然のことながら、亀井氏は反発。首相の囲み取材の1時間後に、記者から
「大臣の認識として、総理は了解しているということですか?」
と聞かれると、亀井氏は
「認識じゃなくて現実なんだ。認識も何もあったもんじゃない」
と即答。「閣内で議論する必要は?」と聞かれると、「なんで閣内で議論しないといけないの?」と、不満をぶちまけた。
また、仙谷由人国家戦略相から「閣内で議論すべき」との声が上がったことについて、亀井氏は翌3月26日朝の会見でも、
「関係閣僚である私と原口(総務)大臣において決定し、総理に了解を得て決めた話ですから、そういうプロセスを元に戻すことはありえない」
と断言した。
これに援護射撃をしている形なのが、大塚耕平・金融担当副大臣だ。同日昼に出演したテレビ朝日系の情報番組「ワイド!スクランブル」の中で、「総理と亀井大臣の動きを全部知っている立場」と前置きした上で、
「調整はきっちりしていた。プロセスも踏んでいた。亀井さんと総理は電話でも話している。亀井さんが総理に説明に行っている。政府・与党内で政策会議を10回もやっている」
と、手続きの正当性を主張。
「微妙に(首相と亀井氏に)解釈の違いがあったかも知れないが、そこはよくわからない」
と、若干の含みを残したものの、鳩山首相が劣勢に立たされた形だ。
「金融の問題だけでとらえるべきものではない」ということ??
実際、鳩山首相は同日夕方の記者会見で
「『言った言わない』の水掛け論になっている。『亀井さんにお任せします』的なことを言ったのか」
と記者から突っ込まれても、
「閣僚懇(閣議後の閣僚懇談会)で私から申し上げたことは、『金融の問題だけでとらえるべきものではない』ということで、『さまざまな閣僚間で意見交換しようではないか』と提案したところだ。来週火曜日(3月30日)の閣僚懇談で議論をして、結論を出せるようにしたい」
と「肩すかし」発言。
「水掛け論の話の中にはいるつもりはない。大事なことは、閣内でまだ決定していない段階で、それぞれの方々がそれぞれの立場で発言することを『閣内不一致』と批判されると、自由な議論ができなくなるということ。むしろ、自由な議論はあってしかるべきだ」
などと釈明した。ただ、「閣内でまだ決定していない」点は強調しており、両者の主張は依然平行線のままだ。
なお、この日の官邸での首相会見で、ネットメディアやフリーランスのジャーナリストの参加が初めて認められた。