不景気で節約に取り組んでいる人は多いが、たまにはちょっと贅沢をしたいと考える人も増えている。「節約疲れ」しないためにもメリハリが有効のようだ。実際、「ちょっとした贅沢」をコンセプトに掲げた商品は売れ行きが伸びている。
電通総研が20~69歳の男女1500人に行った「消費気分調査レポート」で、1年前と比べてお金の使い方にどのような変化があったのかを聞いたところ、「総じて減らしている」が09年3月の50.5%から10年3月は44.1%となり、多数派ながらも微減した。
一方で、「増やすところと減らすところのメリハリをつけている」が09年3月の20.8%から10年3月は26.0%となり、増加傾向にある。
30~40歳代のお客に特に人気
節約意識については1年間で大きな変化はなく、8割弱の人が意識している。一方、ちょっと贅沢なお金の使い方が「ときどきある」人は24.4%(09年3月)から33.7%(10年3月)になり、「たまにある」人が39.6%(09年3月)から46.2%(10年3月)に増加した。調査は10年2月27日~2月28日に行われた。
調査を行った電通総研消費者研究センター消費の未来研究部担当者は、
「節約は『現代人のマナー』として定着しつつありますが、節約ばっかりではつまらないし、『節約疲れ』になることもあります。たまには贅沢して効率よく生活している様子がうかがえます」
と話している。
週末に1000円の高速道路を使って近場に旅行したり、ネット通販で高級料理を取り寄せしたり、ブランド品をアウトレットモールで買ったりすることがちょっとした贅沢だそうだ。
「ちょっとした贅沢」をコンセプトに掲げた商品は売上げが伸びている。
森永乳業のアイスクリーム「エスキモー パルム(PARM)」は6本入りで、希望小売価格は380円。アソートパックのボリュームゾーンが300円のところ「パルム」は高めだが、09年4月~10年3月の売上げは05年の3.5倍と好調だった。広報担当者は、
「ちょっとした贅沢を求める30~40歳代のお客さまに特に人気があります」
といっている。
09年3月15日には新しく「ロイヤルミルクティー」味を出した。また、09年12月に1本売りの「PARM チョコレート」(120円)をコンビにエンスストア限定で発売したところ当初計画の1.5倍で売れたので、10年3月22日からスーパーマーケットなどにも販売を拡大している。
なんでもない週末にちょっと高めのスイーツやワイン
また同社は20~40歳代の働く男女1000 人に「ちょっとした贅沢に関する意識調査」を09年7月に行った。それほどお金をかけずに満足感を得られる「平日のちょっとした贅沢」をしたいと思う人は全体の約9割にのぼる。
サントリーのビール「ザ・プレミアム・モルツ」はコンビニエンスストアで一般的な缶ビールより40円前後、新ジャンルより140円前後高く売られている。にもかかわらず、09年1~12月の販売実績は前年同期比110.2%の1266万ケース(1ケースは633ミリリットル大瓶×20本)だった。広報担当者は、
「リーマンショック以降、お客さまの財布のひもは固く、ビール市場が苦戦しているなかでも伸びている方だと思います。普段は第3のビールを飲んで、何かいいことがあった時などにプレミアムモルツを飲むという具合に、お客さま自身が使い分けをしているようです」
と話している。
お取り寄せグルメが人気の通販サイト「楽天市場」でも「ちょっとした贅沢」を求める傾向がうかがえる。広報担当者は、
「誕生日などのイベント時期ではなくても、なんでもない週末にちょっと高めのお肉やケーキなどスイーツ、ワインを買って、ささやかな贅沢をしようというお客さまが増えているように感じます。わざわざデパートに出かけて高価なものを買うのはまだハードルが高いが、ネット通販ならではの利便性が後押ししていると思います」
といっている。
実際、「ちょっとした贅沢」を切り口に提案している店舗が増えているそうだ。