クロマグロ「浮かれ報道は危ない」 途上国に「借り」、そのツケは

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中国が「影の主役」として大きな役割を果たす

   途上国には漁業国、マグロ輸出国も多く、マグロ禁輸の直接的な打撃はもちろん、将来的に他の漁業資源にも禁輸などの動きが広がることへの警戒感も広がったという。また、中国もフカヒレ(サメ)の乱獲規制への警戒感など日本と利害が一致。経済援助などで急速に関係を深めるアフリカ諸国などに対し、「積極的にクロマグロ禁輸反対で動いてくれた」(農水省幹部)。

   だが、今回のマグロをめぐる構図は、地球温暖化対策を話し合った2009年末の気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15、ブリュッセル)の時とねじれたものだった。COP15では、温室効果ガスの排出抑制に積極的な日本や欧州などと中国・途上国が対立したが、今回、日本は途上国と手を組んで欧州の主張を葬った。「アフリカに対する中国の影響力の大きさというものは今回もまざまざと見た」(小澤鋭仁環境相)というように、中国が「影の主役」として大きな役割を果たしたのは、COP15とまったく同じで、日本の立ち位置だけが違っていた。

   今回の結果が見せつけたのは、環境などに敏感な米欧と、経済的実利重視の途上国などの対立ともいえる。COP15で温室効果ガス削減に向け積極的に動いた日本は、皮肉にも今回のささやかな勝利で、温暖化など地球規模の課題では対立する途上国に「借り」を作った形だ。「そのツケが今後、どう回ってくるか、頭が痛い」(環境省筋)との声も聞こえる。

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