小沢一郎幹事長をはじめとする執行部批判を繰り返したとして、民主党の生方幸夫副幹事長の事実上の解任が決まった。生方氏は、解任が決まったあともテレビ出演を繰り返し、執行部批判をやめる様子はない。「言論統制」が行われていると揶揄されることもある民主党だが、所属議員のツイッターでは、今回の「解任劇」に懐疑的な声も聞こえてくる。
今回の解任劇の発端になったのが、2010年3月17日掲載の産経新聞のインタビューだ。
党内からも疑問の声が噴出
生方氏は
「地方分権にしようと言っていたのに、民主党の運営はまさに中央集権です。今の民主党は権限と財源をどなたか一人が握っている」
と、小沢幹事長に権力が集中している現状を批判。「政治とカネ」の問題については、
「小沢さんがしかるべき場所できちんと説明するのが第一。それで国民の納得が得られなければ自ら進退を考えるしかないです」
などと辞任を迫った。
これを受けて、3月18日、高嶋良充筆頭副幹事長が生方氏を党本部に呼び、自発的な辞任を求めた。これに対して生方氏は「秘書が3人も逮捕されている(小沢)幹事長の責任はどうなるんですか?」と反発。会談は物別れに終わり、急きょ開かれた副幹事長会で解任の方針が決まった。
この解任劇をめぐっては、党内からも疑問の声が噴出している。例えば枝野幸男行政刷新担当相は「生方さんが何か問題になるようなことをおっしゃったことが、最近あるとは認識していない」と述べたほか、野田佳彦副財務相は「耳に痛い話をした人が辞表を迫られるというのは、極めてよろしくない」と執行部を批判した。
翌3月19日になっても、批判のトーンが弱まることはない。生方氏はTBS「朝ズバッ!」やテレビ朝日「ワイド!スクランブル」に相次いで出演。例えば、テレビ朝日の番組では、コメンテーターが
「ご本人を(副幹事長会に)呼ばずにすぐに解任というのは異例のこと。民主党はここまで支持率が落ちてきていて、『こういう方策に出れば余計支持率が落ちるだろう』という考えは執行部にはないんですかね?」
と水を向けると、生方氏は
「それも分からなくなっているのが、昨日の(解任劇の)象徴じゃないですかね。誰かが止めなきゃいけませんね。私もまさか、昨日(党本部に)行って『辞めてくれ』という話しになるとは思いませんでした。注意ぐらいはされると思っていたのですが、『辞めていただけませんか』となった」
と、やはり執行部批判を繰り返した。
自民議員も今回の解任劇に「つぶやく」
解任劇をめぐっては、ツイッターに意見を書く議員も多い。民主党内では、蓮舫参院議員が
「朝からテレビ報道、新聞をよく見ても、生方副幹事長更迭はわからない。コメンテーターの言われる通りだし、違和感しか残らない」
と違和感を表明。この書き込みに返信する形で、大西健介衆院議員も
「党内のモチベーションも下がりますね」
と懸念を表明した。
村越祐民衆院議員は
「執行部を批判したから、という理由で副幹事長を解任せんとする執行部はどうかしているが、副幹事長に居座って執行部批判をしようとしている生方氏もどうかしている」
と、いわば「けんか両成敗」との立場。
一方、長尾敬衆院議員は、
「外部に対する、執行部批判はあまり積極的にはなれないですね。そのエネルギーがあれば、政策について世論を巻き込んで積極的に行いたい。『議論する場がない』という訴えの様ですが、どんな政策だったのでしょうか。それを前面にするほうがよろしいかと」
と、やや執行部寄りの立場で、自民党から民主党に転じた田村耕太郎参院議員も
「自民でも民主でも、本当に良くしたい人たちは、当事者の前で言うべきだし、言っていると思います。私も自民在籍中、谷垣さんに言いましたし、小沢さんにも会って言っています。両者とも度量広いです。本人に直接言わずメディアに言うのもいかがなものか?」
と、同様だ。
自民党でも、今回の解任劇について「つぶやく」議員は多い。岩屋毅衆院議員は
「民主党の生方副幹事長が解任された。信じられない。執行部批判が解任につながるなら、今の自民党なんか解任だらけだ。某国だったら、銃殺か。こういう暗黒政党が最大与党であることには戦慄を覚える」
とつぶやき、小池百合子衆院議員は
「『北朝鮮:デノミ失敗で責任者処刑か』(毎日) 『小沢幹事長:生方副幹事長更迭…執行部批判、辞任要求拒否』(同) あえて並べてみる」
と発言。両者とも、民主党を北朝鮮に例えて皮肉っている。