本屋さんの店員の投票で決まるマンガ大賞に、2010年はヤマザキマリさんの『テルマエ・ロマエ』が選ばれた。古代ローマの公衆浴場をテーマにした作品で、扱っている内容はかなりマニアックだが、「笑える風呂マンガ」として話題になっている。
3月17日、2010年のマンガ大賞が発表された。大賞は、09年12月に第1巻が発売されたヤマザキマリの『テルマエ・ロマエ』で、2位は09年も2位だった『宇宙兄弟』(小山宙哉)、3位が『バクマン。』(大場つぐみ・小畑健)だった。
古代ローマ人が現代日本にタイムスリップ
『テルマエ・ロマエ』は古代ローマ時代の公衆浴場をテーマにしたギャグマンガ。ローマ人の設計技師ルシウスが現代日本の銭湯、温泉などにタイムスリップし、そこで得たアイデアを古代ローマで次々と再現していくというストーリーだ。
銭湯の壁面にはよく富士山が描かれているが、それにヒントを得て、公衆浴場にヴェスビオス火山を描いたり、シャンプーハットやフルーツ牛乳、ウォッシュレットなどもローマ風にアレンジして再現。ルシウスの設計する浴場はローマ中で話題となり、やがて皇帝にも重用されるようになる。
08年からエンターブレインの『コミックビーム』に掲載され、第1巻が09年11月に発売された。これまで30万部発行されている。
古代ローマの風呂という、極めてマニアックなものを扱っているのに、何故これほどまでに支持されるのか。その理由の1つが、著者ヤマザキさんの徹底した時代考証だ。公式ブログなどによると、ヤマザキさんは17歳で絵を勉強するためにイタリア・フィレンツェに渡り、その後イタリア人男性と結婚。中東で暮らしたあと、現在はポルトガルに住んでいる。
ローマが近いためか、かなり綿密に取材を行っているようで、間に入るコラム「ローマ&風呂、わが愛」には、ローマ時代の浴場の壁画や排水溝、当時の入浴道具などの写真がたくさん掲載されている。作中では、当時の建築物から装身具、日用雑貨までがかなり細かく描かれており、ネット上には、
「時代考証もなかなかのもののように思います。ハドリアヌスの別荘とか、ローマの街路の排水溝とか」
「笑える風呂マンガ!」
「一分の隙もない時代考証の正確さ。しかもルシウスがしゃべってるのラテン語よ!? なんちゃって語学じゃなくて、ちゃんと台詞が羅日対訳になってるんですよ!?」
といった感想が書き込まれている。