電子ブック「キンドル」の動向に注目が集まるなか、キンドルの米国でのベストセラーランキングが話題になっている。上位にランクインしている多くの本の値段は「0ドル」。つまり無料だということだ。米国では「本の内容をウェブ上で公開した方が、紙媒体の売り上げも増加する」という研究結果もあり、キンドルが一種の「販促ツール」として利用されているらしい。
アマゾンが発売したキンドルは新聞や書籍をネットワーク経由でダウンロードする仕組みで、「価格を2.99~9.99ドルの間に設定し、紙の書籍の最安値より2割引以上にする」といった条件を満たした場合には「印税7割」という異例の制度が話題を呼んだ。
1位から6位まで「0ドル」
ここに来て注目を集めているのが、アマゾンサイト内で公表されている、キンドルのベストセラーランキングだ。ベスト25のうち、13冊の値段が「$0.00」なのだ。この「0ドル書籍」が、実に1位から6位までを占拠している。
だが、決して「タダで本を配ることに意味がない」ということではないようなのだ。
米ユタ州のブリガムヤング大学の研究者2人が2010年冬に発表した論文によると、「電子書籍を永久的に無料公開することと、紙媒体の売り上げが短期間上昇することには、中程度の相関関係が見られる」のだという。
論文では、PDFなどで全文を無料で公開した書籍41冊を対象に、電子媒体を公開する前の8週間と公開後の8週間について、紙媒体の売り上げを調査。電子媒体公開後には、ノンフィクションの紙媒体の売り上げが5%、フィクション(小説)は26%も伸びた。一方、ダウンロードできる期間を1週間に限定したり、ダウンロードの時に登録を求めたりした本については、紙媒体の売り上げが減少した。