政府が今国会で成立を目指す「地球温暖化対策基本法案」が2010年3月12日の閣議で決定された。鳩山由紀夫首相が国際公約した温室効果ガスの「2020年までに90年比25%削減」という目標を明記した。
ただ、企業間で温室効果ガス排出枠を売買する排出量取引制度を巡り、省庁、政治家の意見対立が解けず、「両論併記」でやっと合意に漕ぎ着けるという迷走ぶり。施策の具体的な制度設計は先送りされ、前途多難を予感させる決着になった。
産業界が「国際競争力を削ぐ」と強く反発
法案策定で最大の争点になったのは、国内排出量取引制度。制度を創設することでは早くから固まったが、問題はその中身。民主党のマニフェストや野党時代に提案した法案には、政府が企業ごとに温室効果ガスの排出量枠(キャップ)を割り当て、この枠を上回って排出した企業が、枠を余らせた企業から、超過分の排出量を買わなければならないという「キャップ・アンド・トレード(C&T)」方式を提唱していたが、産業界が「国際競争力を削ぐ」「過重な負担が技術開発の原資を奪」などと強く反発。生産量あたりの排出量に上限を設ける「原単位方式」を主張したのだ。
法案は結局、C&T方式を基本に位置づけた上で、「原単位方式」も検討すると盛り込んで決着した。
実はマニフェスト策定から今回の法案決定まで、かかわった政治家が複雑に絡み、問題をややこしくした。
2008年1月に民主党は「地球温暖化対策本部」を設置。本部長に岡田克也・現外相、事務総長に福山哲郎・現副外相が就き、同年5月に「地球温暖化対策基本法案」、09年3月に「C&T」の導入を盛り込んだ報告書をまとめている。他方、民主党「次の内閣」の農水相だった筒井信孝衆院議員を中心に08年12月に「『緑の内需』構想について」という提言が「閣議」に提出され、「緑の成長戦略調査会」が設置された。その会長が川端達夫・現文部科学相、事務総長が筒井議員、事務局長は通産省(現経済産業省)OBの松井孝治・現官房副長官が務め、各省からのヒアリングなどを通じて、民主党の政策論議の一翼を担った――といった具合。