内定をもらっていない大学4年生は5人に1人にのぼる。就職先が決まらないまま卒業するよりも、1年留年して「新卒」として就職活動を続ける方が有利だと考える学生は少なくなく、就活のための留年を認める大学が全国で相次いでいる。
青山学院大学は卒業に必要な単位を取得した学生を対象にした「卒業延期制度」を2010年2月25日から導入している。基本料と受講料の半額を納めなければならないが、在籍料と考えればさほど高くはないのかもしれない。
東京工芸大は授業料5分の1
湘南工科大(神奈川県藤沢市)も卒業要件を満たした学生が就活のため最長1年間在籍できる「就職支援特別在籍制度」を設けた。就職課の担当者によると例年高い就職率を誇っているが、10年度は卒業予定者530人のうち約80人が内定をもらえなかったことから設立を決めた。
学費は通常授業料の約18%となり、半年で11万円、年間では22万円だ。3月4日の締め切りまでに69人が応募し、およそ7人に1人という高い割合だった。
東京工芸大(中野区)も1年間の「在学延長」を認める制度を発足。ただし09年10月以降に就職内定の取消しを受けた学生のみが対象となる。在籍期間は最大1年。学費は通常の授業料の約5分の1となり、半期で10万円、1年間で20万円だ。
5年以上も前から「卒業延期制度」を導入しているのは成蹊大学。国家試験受験などの理由でも利用できる。10年度卒業予定者1800人弱のうち制度を利用したのは70人で、教務部担当者によると09年度よりも増えた。授業料は文系が50万円弱、理工学部が約75万円となり、いずれも年間授業料の半額だ。希望者は授業を受けることもできるという。
文科省への問い合わせ相次ぐ
文部科学省大学新興課の担当者は、
「就活のための留年を認める大学が全国でどの程度あるかは調査をしていないのでわかりませんが、単位が揃っている学生を留年させるのは法的に問題ないか、という相談はかなりの数を受けています」
といっている。
厚生労働省の調査によると、10年春卒業予定の大学生の就職内定率は2月1日時点で前年同期を6.3ポイント下回る80.0%で、5人に1人の学生が内定をもらっていないという厳しい結果となった。この状況が続けば卒業延期制度を導入する大学が11年以降も増えそうだ。
一方、文部科学省大学新興課の担当者は、
「学生が希望する場合のみ留年させるという規則を作った上でないと、悪用される可能性があり、アカデミックハラスメントを増やす危険があります」
と大学関係者に注意を促している。