2009年夏の総選挙直前に結党したみんなの党は「政界再編」を目標に掲げて船出した。参院選が2010年夏に迫るなか、自民党内からも新党結成に向けた動きが表面化している。みんなの党は舛添要一氏や鳩山邦夫氏と組むのか。政界再編に向けた戦略について、渡辺喜美代表に聞いた。
――民主党への失望感が広がるなか「政界再編」の話が浮上しています。みんなの党は今後、どういう展開をしていくのでしょうか?
渡辺 みんなの党は政界再編をするために作った政党ですからね。やはり政と官の一体改革を行っていくためには、ガラガラポンで「政治の再結集」を行う必要がある。今の自民党や民主党は「大きな政府」が建前ですけど、我々と同じように「小さな政府のほうがいい」「官僚統制・中央集権をやめさせる」という人たちもそれぞれの政党にいるので、そういう切り口で政界再編をやればいい。
「舛添さんと話はしています。回数は少ないけれど」
渡辺 できれば、民主も分裂、自民も分裂というのが理想型ですが、なかなか理想どおりにものごとが運ばないのが世の常。だとすれば、我々が第3極をつくって政界再編をしかけていこうということです。まずは次の参議院選挙で、みんなの党が第3極としてキャスティングボートが取れるぐらいの議席を確保するというのが一番いいシナリオですね。
――「キャスティングボートを取れるぐらいの議席」というのは、常々公言している「二桁以上の議席」ということでしょうか。
渡辺 そうですね。何議席をとったらキャスティングボートかというのは、民主党や自民党がどれくらい取るかで決まるので、いまの時点で何議席がキャスティングボートかは全く分かりませんが、我々がキャスティングボートを握ることで、政界再編は非常に加速していくと思います。
――政界再編というと、舛添さんや鳩山邦夫さんが連携候補として渡辺代表の名前を出していますが、やはり一緒に組む可能性が高いのでしょうか。
渡辺 まあ、舛添さんと話はしています。回数は少ないけれども、お互いの立場を確認しあっているところです。我々はすでに行動を起こして新党を作っていますので、舛添さんたちにも「ぜひ新党を作られたらいかがですか」ということは申し上げています。
――新党として一緒になるのではなく、別々の政党で。ということですか。
渡辺 ラーメン屋の屋台と同じで、1軒の屋台に集まるお客さんの数はたかがしれている。1軒よりも2軒、2軒よりも3軒が集まったほうが、全体としてのお客さんの数は増えていくわけですよ。ラーメンの屋台がたくさん増えて、ラーメン屋台村が出来上がれば、その評判を聞いていろんなところからお客さんが集まるじゃないですか。
「第3極の勢力も一緒にならないと、死票が増えて民主党が高笑いするんだ」という解説がまことしやかに言われていますけど、それは政治のダイナミズムが分かっていない人たちの言っていること。第3極が小党分立になって、結局民主が勝つ、ということには決してならないと私たちは確信しています。
「みんなの党は覚悟を持った集団」
――一つの政党にまとまることが第一という考え方ではない、ということですね。
渡辺 常識的なやり方としては、参院選の前に大同団結をするというよりも、それぞれのラーメン屋台が出店してお互いが競い合う。その結果を踏まえて参院選のあとで大同団結をするというのが教科書的には正しいやり方ではないでしょうかね。
舛添さんと私の考えが似通っているとはいえ、100%同じかというとそうでもないところもある。だから、最初にそれぞれの新党がマニフェストを出して競い合えばいい。「選挙前の合同は絶対ない」とは申し上げませんけれども、常識的には、選挙後ということですね。
――さきほどの話では、「小さな政府か、大きな政府か」と観点で再編されるのがいいのではないかということでしたが、舛添さんや鳩山さんとはその点で一致できそうですか。
渡辺 鳩山邦夫さんはちょっと違うと思いますね。それはご自身も言っているとおりだと思います。我々は「民間にできることは民間に、地方にできることは地方に」という立場です。日本という国は借金も大きいけれど、その反対側にある国家資産もやたら大きい。500兆円以上もある金融資産が天下りネットワークに流れ込んで、霞ヶ関が民間を統制し、地方を支配するシステムになっています。
こういう天下りシステムのもとで歪んできた国家財政を圧縮する。つまり大きくなりすぎた国家資産を小さくするというのが「小さな政府」を作るということですが、こういうことを言っている政党はみんなの党しかない。政界再編もそういうアジェンダのもとに行われていくことが大事なことで、それぞれの第3極がそれぞれのアジェンダを競い合い、選挙結果を踏まえて大同団結していくというのが、常識的な判断だと思います。
――週刊プレイボーイのインタビューでは「みんなの党は坂本龍馬をみんなでやっている」という発言もありました。
渡辺 我々が言わんとしているのは、要するに「覚悟を持った集団」ということです。たとえば、私は自民党の脱藩組だし、浅尾慶一郎さんは民主党の脱藩組。まさに覚悟をもって集まってきている。この覚悟のほどが国民に伝わっていくと、みんなの党の支持者は熱いハートの人たちが非常に多くなるわけですね。 だから、しがらみもない、組織もない、支持団体もない。だけれども、熱い支持者に支えられて「みんなの党っていいよね」とクチコミで伝わっていくわけですから、結構いいところにいっちゃうんですね(笑)。