東京都が都議会に提出した「青少年健全育成条例」改正案をめぐり、波紋が広がっている。改正案では、マンガやアニメのキャラクターを想定した「非実在青少年」という概念を新たに設け、内容によっては「不健全図書」に指定することができるようになっているほか、ケータイのフィルタリングについて、事業者に努力義務を定めている。
これに対して、「表現の自由に抵触する」「これまでの動きを無視した規制は、かえってリテラシーを後退させるのでは」などとマンガ・ケータイの両業界から反発が強まっている。
児童ポルノ根絶に向けた動きの一環として自主規制
条例案は「東京都青少年問題協議会」の答申を受け、都が2010年2月24日開会の都議会に提出したもの。児童ポルノ根絶に向けた動きの一環として、図書販売の自主規制に関する条項に新たに「非実在青少年」という概念が加わったり、青少年のケータイ利用についての条項を増やしたりしたのが特徴だ。
これまでの各都道府県の青少年健全育成条例でも、「青少年の健全な人格形成に対して有害」と判断された書籍や雑誌については、いわゆる「有害図書」(東京都では「不健全図書」)に指定し、書店やコンビニで「区分陳列」(一般の棚とは隔離して販売)することになっている。この「不健全図書」に指定されうる対象として加わったのが、今回の「非実在青少年」という概念だ。改正案によると、その定義は
「年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起される事項の表示又は音声による描写から18歳未満として表現されていると認識されるもの」
というもので、マンガやアニメのキャラクターを念頭に置いたものとみられる。
この条項をめぐっては、都議会でもすでに疑問の声があがっている。例えば3月3日の一般質問では、西沢けいた議員(民主)が
「過激な表現が描写されているものは当然規制すべきだと思うが、こうした新たな概念が具体的にどのようなものか明確ではなく、あいまい。解釈のしようによっては『青少年を描写した漫画やアニメのほとんどが適用されてしまうのではないか』という懸念を持つ方もいる」
と述べている。
これに対して、倉田潤青少年・治安対策本部長は、
「その(「非実在青少年」による)性交または性交類似行為に係る姿態を、正当な理由なく性的対象として肯定的に描写した漫画等について、青少年に対する販売等の自主規制及び不健全図書指定の対象に追加する」
「単に子どもや、その裸の描写が含まれる漫画やアニメを規制するものではなく、また広く成人に対する流通一般を規制するものでもない」
と答弁。つまり、(1)「非実在青少年」が描かれているからといって、すぐ規制対象になる訳ではない(2)「非実在青少年」が性行為をしている作品であっても、成人に対しては規制しない、との反論だ。