民主党・藤田幸久国際局長は反米志向があり、同時多発テロの陰謀論まで示唆した――。こんな内容の社説を米ワシントン・ポスト紙が掲載し、波紋が広がっている。もし鳩山首相が許容するなら日米関係に悪影響が出るとしたが、藤田氏は、こうした内容を否定している。
「日本の指導的な政治家が9.11の幻想を支持した」
ワシントン・ポスト紙が2010年3月8日に掲げた社説では、こんなセンセーショナルな見出しが付いている。
ワシントン・ポストが「反米志向」と紹介
同紙の社説によると、藤田幸久国際局長は、同紙編集委員のインタビューに対し、世界貿易センタービルへの攻撃は、本当にテロリストたちの仕業かどうか疑問を示した。そして、陰謀をあらかじめ知っていた陰の勢力が株式市場で利益を上げたと示唆した。さらに、藤田氏は、ハイジャッカー19人のうち8人が生きているという考えを広めており、少なくとも同センターの第7ビルの倒壊は火災などでなく起爆装置で起きたとほのめかしたと主張している。
そのうえで、藤田氏の考えは、アメリカへの深い不信に根付いており、民主党や鳩山由紀夫政権に浸透している反米志向を反映しているように思えると指摘。もし鳩山首相が藤田氏のような向こう見ずで事実嫌いの党分子を許容するなら、日米関係に深刻な悪影響があるだろうと断じている。
この記事には、サイト上ではコメントが500ほども付いており、波紋が広がっているようだ。日本でも、朝日や読売、共同通信が3月9日に第一報を伝えている。
藤田氏は、野党時代の2008年1月10日の参議院外交防衛委員会で、9.11テロの検証が必要だとする持論を述べている。
そこでも、世界貿易センターの第7ビルが小規模な火災というだけで崩壊し、テロ直前に一部企業が株式市場でボロ儲けをした、などと疑問を呈していた。
「取材外の質問」と不信感を露わ
また、藤田幸久国際局長は、2009年4月に「9.11テロ疑惑・国会追及―オバマ米国は変われるか?」を出版。そのことを紹介した公式サイトでは、同8日の出版記念会に、当時民主党幹事長だった鳩山由紀夫氏らが出席したことを報告している。さらに、10年1月22日号の週刊朝日でも、アメリカは犯人を特定しておらず、ビル倒壊の原因を再調査すべきだと主張していた。
藤田氏は、同時多発テロの「陰謀論者」というのは本当なのか。
国会事務所の秘書は、取材に対し、藤田氏のコメント文書を送ってきた。それによると、9.11が陰謀だと結論したこともなければ、ビル爆破などと断定したことはなく、インタビュー後の雑談でも明確に言ったとしている。「むしろ、犠牲者家族などの支援やアフガニスタン戦争や人道援助の現場から、『テロとの戦い』の原点の検証が必要との立場から国会質問などを行って来た、ことを紹介した」という。
反米志向との指摘については、「米軍元捕虜の支援活動を含め、アメリカ各界に友人も多く、日米の懸け橋作りに長年努力してきた」と反論している。
インタビューは、移民受け入れという別のテーマだったといい、同時テロについては、「取材外の質問として応対していた」と編集委員への不信感を露わにしている。最後に、記事では肩書きも間違っていたなどとして、「事実を歪曲した扇動的報道と断ぜざるを得ない」と主張している。