日銀は2010年3月16、17日の金融政策決定会合で、追加の金融緩和策の検討に入る見通しだ。日銀は2009年12月、「物価下落を許容しない」と表明し、「デフレファイター」の立場を鮮明にした。しかし、1~2月の決定会合は「無風」で過ごしたため、政府はいらだちを強め、国債の直接買い入れなど金融緩和を求める声が起きている。
国債買い入れに抵抗感が強い日銀は、09年12月に導入した新たな資金供給手段(新型オペ)の拡充を打ち出し、圧力をかわす戦術に出そうだ。
追加緩和の急先鋒は亀井静香・金融担当相
日銀は09年12月の臨時会合で、期間3カ月の資金を、政策金利(無担保コール翌日物)と同じ超低金利で貸し出す新型オペの導入を決定。週に8000億円程度、総額10兆円を供給する計画だ。12月の供給分が3月で一巡するのに合わせ、同オペの効果を検証するとともに、貸出期間の延長や、供給額の増額などの追加緩和を議論すると見られる。
緩和策を議論するのは、消費者物価下落率の改善傾向が足元で鈍化していることを踏まえ、政府から追加緩和の催促が強まっているためだ。急先鋒は亀井静香・金融担当相。亀井氏は3月1日の衆院財務金融委員会で、「政府の財源についても責任を」と述べ、日銀が政府から国債を直接買い入れるよう求めた。
日銀は現在、年21.6兆円を上限に、市場から国債を買い入れている。政府には、日銀がさらに買い増して市場に資金を供給するよう求める声もあるが、亀井氏は一歩進め、政府から直接買い入れるよう風圧を強めた形だ。さすがに、日銀が国債を直接引き受けるのは財政法で禁じられている。日銀にとって国債直接引き受けなどとても飲めないシロモノだ。
国債買い入れの増額で長期金利が上昇?
日銀は、市場での国債買い入れの増額であっても、財政規律が緩む懸念から長期金利が上昇しかねないとみている。まして、ギリシャの財政問題を契機に、市場は政府の財政リスクに敏感になっている。このため、12月に導入した新型オペを拡充させて緩和圧力をかわすとともに、政府に需要不足の穴埋めのための成長戦略や、財政健全化への取り組みを求め、守勢をばん回したい考えだ。
新型オペを拡充すれば、短期金利が一定程度下がり、企業が設備投資をしたり、家計が住宅ローンを組みやすくなったりして、景気を下支えする効果が期待される。ドルの金利が相対的に高くなるため、資金が円からドルに流れ、円高圧力が緩和される面もある。そもそも新型オペは拡充しやすい制度設計となっており、日銀にとっては想定通りの対応だ。
しかし、もともと短期金利は低下しており、アナリストからは「その程度では追加緩和の効果は限定的」との見方が強い。金融政策が効果を発揮するには1年以上かかることもあり、夏場にかけて景気が弱含めば、政府が国債の買い入れ増額を求める局面が再び訪れそうだ。