スーパーの西友の親会社である米流通大手ウォルマート日本法人のトップである野田亨最高経営責任者(CEO)が、2010年の事業方針で、「飛躍的成長を目指して、M&A(企業の合併・買収)も視野に入れながら店舗網を拡大する」と宣言した。西友との資本提携で02年に日本進出を果たして以来、「日本でナンバーワンの総合スーパーに」との大目標を掲げてきたウォルマート。今回の「M&A宣言」はその達成へ号砲を鳴らすものだ。
「機が熟したということだろう」。ライバルスーパー、イオンの幹部の一人はそう解説する。
世界最大の小売業といわれるウォルマートだが、日本進出以来の戦略は誤算続きだった。同社が西友に資本参加してまず実行したのは、「エブリデーロープライス(EDLP=毎日がお買い得)」と呼ばれる企業方針の西友への移植だ。
西友の「デフレ商戦」に注目集まる
「毎日安いから足を運んでもらえるはず」と、2004年に新聞の折り込みチラシを廃止したが、チラシで毎週の特売情報をチェックする主婦層の客離れを招き、安易なコスト削減が売り上げ減をもたらす悪循環に陥った。
その後も、正社員従業員の早期退職実施など人員削減などのリストラによって財務体質改善を優先する路線を続けたが、客離れは止まらなかった。08年4月には西友を完全子会社にして上場廃止としたが、「車で来店してまとめ買い」という生活スタイルが定着する米本国と、衣・食・住に渡って多くの専門店が乱立する日本流の消費スタイルはかみあわず、出店戦略は思うに任せなかったようだ。
ウォルマート・西友連合の動きに小売業界の注目がにわかに集まるようになったのは2009年春ごろからだ。「スーパーだけどダサくない」との標語で、プライベートブランド(PB)ファッションの発売開始に合わせて、東京・原宿で大掛かりなファッションショーを開催。ライバルのイオンがユニクロ攻略の切り札として880円ジーンズを発売すれば、それを下回る850円ジーンズを投入した。1本790円のスコッチウイスキー、上下で5000円の紳士スーツ、900円のスニーカーなど、大手スーパーのライバル商品を下回る価格で「デフレ商戦」を牽引してきたのが西友だ。