放送局の寡占化を防ぐ「マスメディア集中排除原則」が省令から法律へとランクアップすることになった。政府が閣議決定した放送法改正案のなかに盛り込まれ、通常国会での成立を目指す。
一方、一つの資本が新聞やテレビなどのメディアを独占的に支配することを防止する「クロスメディア所有規制」については、「制度のあり方の検討」が改正案の附則に明記された。原口一博総務相はこちらも法文化する意向だが、新聞業界は猛反発している。
「マスメディア集中排除原則」を法律に明記
政府は2010年3月5日の閣議で、通信と放送の融合に向けた放送法や電波法など関連法案の改正案を決定した。インターネットの普及で通信と放送の垣根が低くなっていることを受け、現在8本に分かれている関連法を4本にまとめ、法体系を60年ぶりに抜本的に見直した。
そのうち放送法改正案では、これまで総務省令で定めていた「マスメディア集中排除原則」を法律に明記することにした。同原則は複数の放送局への出資を制限して、独占的な資本に放送業界が支配されるのを防ぐもの。原口総務相は法定化の狙いについて、
「省令は誰が誰の責任で決めているのか、国民から見えにくいという批判がある。原理原則は、国権の最高機関である国会の審議を経たルールで明文化することが重要だ」(1月29日の記者会見)
と述べている。放送局規制にも「政治主導」を持ち込んだ形だ。だが、内容的には「規制緩和」の方向となっている。経営が苦しい地方局をキー局が支援しやすくするため、出資比率規制を「5分の1未満」から「3分の1未満」に緩めることができるようにしたのだ。
しかし、メディア総合研究所の岩崎貞明事務局長は「出資規制を緩和しても、地方局にとってどれだけ実効性があるかは疑問」と話す。
「いまはキー局も赤字で、尻に火がついている状態。他人の面倒を見ている余裕はない、というテレビ局が多いのではないか」