バンクーバー五輪の女子フィギュアで金メダルを獲得した金妍兒(キム・ヨナ)選手をめぐり、思わぬ「場外戦」が起こっている。日本のネット上で「金選手が付けていたアクセサリーは、金選手がCMをしているもので、宣伝を禁じている『五輪憲章』に違反する」という指摘が相次いでいるのだ。中には「違反が確定したら、金メダル剥奪」というものもあり、騒動は過熱しつつある。
五輪が始まる前の段階から、金選手のCM人気は高く、現代自動車、サムスン電子、国民銀行などの韓国を代表する企業のCMに数多く出演していることは有名だ。金選手がCMに出たサムスンの携帯電話は、発売から7か月で100万台以上が売れたという。
CM出演しているジュエリーブランドがPR
韓国企業からすると、五輪期間中も金選手の人気にあやかりたいのは当然だ。朝鮮日報によると、国際オリンピック委員会(IOC)のスポンサーであるサムスン電子や、韓国オリンピック委員会(KOC)と別途契約を結んだ現代自動車とナイキなどは、金選手のCMを五輪期間中も流し続けた。契約には、数億ウォン(1億ウォン=782万円)かかるとされている。
一方、LG生活健康や毎日乳業などは、「製品の特性上、多額のスポンサー料を支払ったとしても五輪期間中の売り上げ増は見込めない」などとしてKOCと契約を結んでおらず、五輪期間中の広告は取りやめた。
波紋が広がっているのは、金選手が競技や表彰式で耳に付けていた王冠型のアクセサリーをめぐってだ。このアクセサリーは、金選手がCM出演しているジュエリーブランド「ジェイ・エスティーナ」(J. ESTINA)のもので、同社の担当者は、テレビ朝日系のニュース番組「スーパーJチャンネル」にも登場し、
「これは、キム・ヨナ選手がオリンピックのショートプログラムで付けていた製品で、これがフリーで付けていたアクセサリー」
などとアピールまでしていた。この会社が五輪の公式スポンサーではなかったことから、騒動が広がった。
日本のネットで「金メダル剥奪」の声相次ぐ
現在のオリンピック憲章の第51条には
「オリンピック開催場所の一部であるとみなされるスタジアム、会場、その他の協議エリアの、中と上空ではいかなる形の広告または他の宣伝も許されない」
とあり、さらに細則には
「いかなる形の広告や宣伝活動、コマーシャル等も、人、スポーツウェア、付属品(より一般的には、選手もしくはその他のオリンピック競技大会の参加者が着用する衣類、使用する用具)に表示してはならない」
とある。このことから、日本のネット上では「金選手は五輪憲章に違反している、仮に違反していれば、金メダル剥奪だ」との声が相次いでおり、すでに「まとめサイト」まで開設されている。
まとめサイトでは、今回の騒動を簡潔に説明した上で「この件を調査いただければ幸いです」などとする英語の例文が掲載されており、IOCや、韓国が今後五輪招致を競うとみられるドイツやフランスのマスコミなどの連絡先がまとめられている。すでにこの英文は、金選手の活躍を報じる米ヤフーニュースのコメント欄にも貼り付けられているのが確認されており、関係機関にも、すでに「メル凸」(メールで「突撃」すること)が行われている可能性が高い。
今回の騒動を報じている韓国のニュースサイト「クッキーニュース」によると、KOCの上部団体にあたる大韓体育会は「反論するに及ばない」と、現段階では事実上黙殺する構えで、記事では、
「競技現場で指摘されなかったということは、今も問題ないということ」
という韓国側関係者の声を紹介しており、アクセサリーは五輪憲章が定める「スポーツウェア、付属品」に含まれないとの見方だ。今後、韓国側が何らかの対応に出るかどうかが焦点になりそうだが、韓国側は、一連の騒動に辟易としている様子だ。
例えば前出の「クッキーニュース」では、グーグル日本版の検索画面で「yuna kim」と打ち込むと、検索回数が多いと表示される関連キーワードとして「金妍兒は他のフィギュアスケート選手に嫌われている」(yuna kim is hated by other figure skaters)という言葉が出てくることを紹介。
「日本のネットユーザーは、金選手のあら探しをするのに熱中している」
と論評している。