生活保護費の規模、受給者数ともに全国で最大といわれる大阪市が苦悩している。景気悪化にともなって、受給を申請する人が増加し、財政を圧迫しているのだ。相次ぐ不正受給も問題化している。それに加えて、周辺自治体が「大阪市なら生活保護を受けやすい」と交通費を渡して、受給希望者を事実上「たらい回し」するケースまで出ている。
2008年秋のいわゆる「リーマンショック」以降、大阪市でも生活保護の受給を求める人は急増している。08年7月には1792件だった申請件数は、1年後の09年7月には、2倍以上の3616件だ。
市民の20分の1が受給者
その結果、大阪市では、09年12月の段階で、10万5474世帯、13万6617人が生活保護を受給している。実に、市民の20分の1が受給者という状態だ。
当然、これが市の財政に与える影響は小さくない。10年度の当初予算案では、生活保護費は前年度比17.2%増の2863億円(市の負担額は716億円)。一般会計全体の歳出規模は同3.9%増の1兆6095億円だ。市としては緊縮財政を目指す中、生活保護費の増加が結果として支出額全体を押し上げた形だ。生活保護費が支出の実に17.8%を占めており、生活保護費の動向が市の予算の行方を左右していると言っても過言ではない状態だ。
その中でも、大阪市が頭を悩ませているのが、受給者の「たらい回し」問題だ。10年2月9日行われた「生活保護行政特別調査プロジェクトチーム」の会合で明らかにされた聞き取り調査の結果によると、09年12月に受給を申請した2816人のうち、半年以内に市外から転入してきた人が1割近い274人もいたというのだ。
大阪までの片道交通費を渡されたケースも
さらに、そのうち27人は、一度他の自治体の窓口で相談したにもかかわらず、「大阪市西成区なら申請が認められやすい」などと大阪市行きを勧められたのだという。27人の内訳は、府内自治体で勧められたのが12人で、九州や四国など府外の自治体が15人。なかには、大阪までの片道の交通費を渡されたケースもあったという。
本来、生活保護は、元々の居住地や、最初に相談を受けた自治体が行うことが原則。また、生活保護費は受給額の4分の1を地元自治体が負担する仕組みなので、本来ならば別の自治体が支出すべき保護費を、大阪市は税金から負担させられている形だとも言える。
大阪市では、関係自治体に改善を求めているほか、2月25日には長妻昭厚労相に「生活保護の現状に鑑みた緊急対策について」と題した要望書を提出。要望書では、横行する「たらい回し」問題について、
「困窮者に対する支援上の問題はもとより、その費用を負担する地域住民の理解が得られない」
と、対策を求めている。