消費税の増税時期は「霧の中」 それでも「議論進める」の意味

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   政府税制調査会(会長・菅直人財務相)の専門家委員会(委員長・神野直彦関西学院大教授)が2010年2月下旬、第1回会合を開き、税制の抜本改革に向けた政府の検討作業がスタートした。当面、所得税の議論を先行させる方針だが、鳩山政権は消費税について「4年間は税率を上げない」と封印しており、早くも「当面、踏み込んだ議論はできない」(与党幹部)と、腰が引けた形だ。

   委員会で菅財務相は「所得税(の検討)から着手していただきたい」と指示。また、「小泉・竹中(構造改革)路線の結果、若干の問題のある税制もある」と強調し、所得税の最高税率引き下げなど「金持ち優遇」の改革を見直す考えを示唆した。

5月ごろに中間的報告をする見通し

   これを受け神野委員長は会議後の会見で「(当面は)所得税に焦点を絞りながら、80年代以降の(税制改正の)検証をしていく」と述べ、法人税、消費税などを含め、税制全般の抜本改革の青写真を描く意欲を示した。

   今回の税制改革論議は政権交代して、09年末は予算編成作業のあわただしい中での単年度の小粒の改革しかできなかったのから打って変わり、民主党政権による本格的な改革論議と位置づけられるが、当面は、6月までに政府がまとめる2011~13年度の3年間の歳入・歳出の大枠を示す「中期財政フレーム」をにらんで、「5月ごろに中間的報告をする見通し」(財務省筋)。このほかは、最終的にどのような日程で報告をまとめていくかのめどはたっていないのが実態。

   従来の税制改正であれば、予め大まかな日程を立て、テーマも整理してスタートするのが普通だった。しかし、今回はそうした「シナリオ」はないため、実際の議論の行方は霧の中。このため、初会合を報じた新聞各紙の見出しも、「所得税から議論開始」では共通するものの、焦点については「所得税最高税率見直し」(読売)、「最高税率引き上げ焦点に」(毎日)、「最高税率引き上げ視野」(東京)、「本丸は控除見直し」(日経)、「所得税と消費税焦点」(朝日)、「消費増税、『百年の計』示せるか」(産経)と、かなりバラバラになった。

所得税の最高税率引き上げが真っ先に議論の俎上に上る

   結局、現時点ではっきりしているのは、所得税の最高税率引き上げが真っ先に議論の俎上に上ることくらい。最高税率は80年代以降、70%から40%に引き下げられたために「税収調達機能が低下している」(神野委員長)ことに加え、所得格差拡大が社会問題化していることから、最高税率アップは理解を得やすいという読みがあるわけだ。

   ただ、それ以外では、方向感が明確なものはほとんどない。同じ「金持ち優遇」の批判が根強い株式譲渡益課税などの軽減税率(本来の20%が10%)などは株式相場に冷水を浴びせかねないだけに容易に踏み込めない。

   民主党のマニフェストで子供手当ての財源として掲げた扶養控除などの控除見直しも、その難しさは09年末の11年度改正で実証済み。

   さらに、本丸の消費税については、菅財務相主導で「議論は進める」と、やや舵を切ったが、「消費税論議のスケジュール感は、まったくないに等しい」(財務省筋)のが実態だ。菅氏は、消費税の増税時期について「逆立ちしても鼻血も出ないほど、完全に無駄をなくしたと言える時」と国会で答弁しているが、「事業仕分け」を含めて「無駄削減」でひねり出せる財源が限られていることも、09年末の予算編成ではっきりした。「安定財源は消費税しかないことはみなわかっている」(民主党幹部)とはいえ、「消費税4年間引き上げず」の公約の下で、将来的な消費税引き上げにどう道筋をつけていくか、まさに「海図なき航海」(財務省幹部)が始まった。

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