所得税の最高税率引き上げが真っ先に議論の俎上に上る
結局、現時点ではっきりしているのは、所得税の最高税率引き上げが真っ先に議論の俎上に上ることくらい。最高税率は80年代以降、70%から40%に引き下げられたために「税収調達機能が低下している」(神野委員長)ことに加え、所得格差拡大が社会問題化していることから、最高税率アップは理解を得やすいという読みがあるわけだ。
ただ、それ以外では、方向感が明確なものはほとんどない。同じ「金持ち優遇」の批判が根強い株式譲渡益課税などの軽減税率(本来の20%が10%)などは株式相場に冷水を浴びせかねないだけに容易に踏み込めない。
民主党のマニフェストで子供手当ての財源として掲げた扶養控除などの控除見直しも、その難しさは09年末の11年度改正で実証済み。
さらに、本丸の消費税については、菅財務相主導で「議論は進める」と、やや舵を切ったが、「消費税論議のスケジュール感は、まったくないに等しい」(財務省筋)のが実態だ。菅氏は、消費税の増税時期について「逆立ちしても鼻血も出ないほど、完全に無駄をなくしたと言える時」と国会で答弁しているが、「事業仕分け」を含めて「無駄削減」でひねり出せる財源が限られていることも、09年末の予算編成ではっきりした。「安定財源は消費税しかないことはみなわかっている」(民主党幹部)とはいえ、「消費税4年間引き上げず」の公約の下で、将来的な消費税引き上げにどう道筋をつけていくか、まさに「海図なき航海」(財務省幹部)が始まった。