官庁や業界団体などが発表する経済指標や統計データに上向きの兆しが出てきた。「二番底は回避できた」との声にも勢いがつき、消費者が景気回復と感じられるまであと一歩まできている、という声も出始めた。
経済産業省が2010年2月26日に発表した経済指標のうち、1月の鉱工業生産指数が前月比2.5%上昇して11か月連続で上昇しているほか、商業販売統計や化学工業統計、繊維・生活用品統計などが上向いた。
外食売上高が3か月ぶりにプラスに
1月の商業販売統計速報によると、小売業販売額(全店ベース)は、前年比2.6%増の11兆1550億円となった。自動車や家電製品のほか、美術品や宝飾品といった高級品も売れた。
不振が続いている繊維工業も、ニットや織物製の外着や下着が伸びて、前月比でみると生産が3.9%の上昇、出荷も7.1%上昇した。在庫は1.3%減った。
医薬品を除く化学工業の生産動向(季節調整済指数)は、前月比3.3%の上昇となった。出荷も同3.4%上昇した。
船舶や鉄道車両を除く機械工業生産指数(季節調整済み)も1月は92.2となり、前月比2.6%上昇した。
また統計データからは、日本フードサービス協会が2月25日に発表した1月の外食売上高が前年同月と比べて1.8%増えて、3か月ぶりにプラスになった。客数が5.9%増加し、商品の値下げに伴う客単価の下落を補った。
東京都内のホテルの稼働率も回復。日本経済新聞社の調べでは、1月の平均客室稼働率は68.7%で、前年同月を9.0ポイント上回った。リーマン・ショック前の08年1月の水準(66.3%)まで回復した。
また日本工作機械工業会は、企業の設備投資マインドを予測する「工作機械短期受注観測調査」の2月の結果を公表。小幅ながら回復を見込むメーカーが増えているとしている。
どれも、ようやく明るさを取り戻してきた。
「消費者が景気回復と感じられるまであと一歩」
とはいえ、経済指標の持ち直しに比べて、生活実感としては「回復」をなかなか感じられない。賃金カットや雇用情勢の悪化、デフレによる物価下落、企業業績の悪化といった「負の連鎖」が横たわるからだ。一方でエコポイントなどの経済対策が景気を下支えしていて、「この流れを持続していくことで企業業績が改善し、雇用環境も回復していく」(経済産業省)ことを期待している。
第一生命経済研究所の主席エコノミスト・嶌峰義清氏は「消費者が、景気が回復してきたと感じられる、あと一歩のところまできている」と話す。
鉱工業生産指数をみると、いまの増勢基調は09年3月以降から続いていて、かれこれ1年間に及ぶ。ただ、生産の持ち直しは、主に在庫調整の進展によるもの。「今後は出荷がどれだけ伸びるかが、生産回復のカギを握る」(嶌峰氏)という。機械受注は設備投資の先行指数として注目されるが、これも「ようやく下げ止まった」とみている。
エコノミストや市場関係者のあいだでは「2010年前半が正念場」とみられていた「二番底」も、1月の経済指標をみれば、そんな心配は払拭できそう。もう一段景気回復を後押しするには「デフレや円高をやわらげて、売り上げを伸ばせる環境をつくっていくこと」(嶌峰氏)と指摘する。