新聞社と販売店との力関係に変化
ただし、電子版の創刊で同社に訪れる大きな変化が、「新聞社が読者の属性を正確に把握できるようになる」という点だ。購読料の支払い方法は、紙媒体と併読の場合であっても、クレジットカード決済のみ。日経本社が、読者から「紙媒体+電子版」の代金をまとめて受け取り、日経が紙媒体の代金を販売店に支払う、という形だ。これまでは、新聞読者の個人情報は販売店が把握しており、新聞社は把握していない。これが様変わりする形で、新聞社と販売店との力関係に変化が訪れるのは確実だ。
さらに、
「現在のNIKKEI NETの広告収入は伸び悩んでいるが、電子版の方はネット広告の収入が伸びていく。読者の登録をいただくことで、読者の属性を把握できる」
として、読者の属性にカスタマイズした広告を出稿できることの強みを強調。広告媒体としての価値の高さをアピールしたい考えだ。
現段階では、読者の登録数や広告の売り上げ目標については明言を避けている。電子版では、「有料会員」と、有料版の一部の記事を読める「無料登録会員」は、「日経ID」を取得することになっているのだが、
「早期に50万IDを達成し、早めに100万台に乗せたい」
と述べるにとどまっている。
業界内で、電子新聞の注目度は高い。例えば朝日新聞の秋山耿太郎社長は、10年1月4日に行われた新年祝賀会の中で、
「日本経済新聞社が新しいタイプの有料の電子版事業を春から本格展開することを発表しており、その成否が注目される。紙の新聞とは別に、様々なデジタル媒体にどのような形でニュースコンテンツを配信していくのか、それぞれのメディアが知恵をしぼって競い合うことになる」
と、対抗意識をあらわにしている。今回の「電子版」の成否が、新聞業界のウェブ化の流れに影響を与えることは確実だ。