バンクーバー冬季オリンピックの日本女子カーリング試合の視聴率がうなぎ登りだ。背景にあるのは美人揃いと評判の「チーム青森」人気とゲーム自体のおもしろさだけではない。テレビの解説者、小林宏(62)さんのしゃべりや「絶叫」が「素晴らしい」とネットで大反響なのだ。
小林さんのブログには、小林さんを応援するコメントが殺到。取材申し込みや、小林さんが代表を務めるカーリングクラブへの入会問い合わせも殺到しているという。
「いいぞっ本橋!よおおしっ、ナイショッ!!!」
「かわしたっ、かわしたっ、これだっ!!」「OK!OK!OK!いいぞっ本橋!よおおしっ、ナイショッ!!!」。そして、「うーっ」と息を詰まらせる音が何度も聞こえ、イギリスに勝利すると「よっし!!」と10回以上連呼した。小林さんの絶叫が響いた2010年2月20日午後0時30分からの生放送は視聴率が16.1%。この日のNHKオリンピック番組での最高をたたき出した。
小林さんの評判は絶叫だけではない。試合の序盤はカーリングのルール、選手、試合の内容について丁寧に説明する。対戦相手が素晴らしいプレイをした際はきっちりと相手選手を讃える。終盤は視聴者が盛り上がるようにボルテージを上げ、最後には絶叫。日本チームが勝利すると感激で涙声になり「チームジャパン」に感謝する言葉を発する。「チームジャパン」とは、日本の選手と関係者、そしてチームを応援してくれる「みなさん」だと解説している。
小林さんは2月20日、自身のブログに、「イギリス戦で気合いを入れて解説する」と書きこんだ。「天下分け目関が原の合戦」だからだ。21日は「チームジャパンのみなさんへ」と題し、イギリス戦の勝利を報告した。2つのブログには合計700ものコメントが付いた。
「神と呼ばれる位、最高のカーリング解説でした」
「目黒選手のミラクルショットが炸裂したときの『よし、よーし……、よぉ~しっ』シビレました」
「『我々もチームジャパンの一員』。この言葉にジーンと来ました」
などというコメントが並んでいる。
取材申し込みや、クラブ入会問い合わせが殺到
もともとスピードスケートの選手。大学卒業後にカーリングと出会い、自ら選手になるとともに、日本にカーリングを普及させる活動を始めた。アルベールビル冬季オリンピック(1992年)は、公開競技ながらカーリング全日本代表チームの監督に。長野五輪(1998年)ではカーリング競技委員長を務めた。世界と日本との実力差を実感していた小林さんは、05年に自費で山梨県山中湖村にカーリング施設「Curlplex Fuji」を建設。運営の山中湖メイプルカーリングクラブの代表になった。以降、選手育成とカーリングの普及に人生をかけた。
代表を務める山中湖メイプルカーリングクラブによれば、前回のトリノオリンピックでの解説以上に今回の反響は大きく、取材の申し込みや、クラブへの入会の問い合わせが殺到。初心者向けの講習は3月までほぼ埋まってしまったという。
「頼りがいがあり、熱い人で、関係者を引っ張っていく親分肌でもある」
クラブの関係者は人柄についてこう話す。クラブを訪れるのは小林さんに会いたい、指導して欲しいという人が多い。今回、解説者として知名度が上がると、一層カーリングの普及につながるのではないか、とクラブでは期待している。