「2次元バーコード」として知られてきた「QRコード」の利用方法が、ここ数年で広がりを見せている。航空券の磁気ストライブの代わりの役割を持たせたり、宅配便ドライバーの勤務状況管理に活用したり、といった例だ。つい最近では、テレビ画面にQRコードを表示して懸賞サイトに視聴者を誘導する試みも始まっており、マーケティングツールとして期待する声もあがっている。
QRコードは、1994年に自動車部品メーカーのデンソーが開発。従来のバーコードに比べて大容量を扱うことができるのが特徴で、数字だけなら約7000字、漢字・かなの場合でも、約1800文字を収録することができる。
URLやキーワードからQRコード表示に変わる
このため、活用の幅はかなり広い。例えば全日空グループでは、06年から07年にかけて航空券にQRコードを記載、磁気ストライプに取って代わった。07年にオープンした鉄道博物館(さいたま市)では、展示コーナーごとにQRコード付きの看板が立ててあり、手元のケータイをかざすと、詳しい説明が読めるようになっている。また、ヤマト運輸グループの神戸ヤマト運輸では、ドライバーに専用アプリをインストールしたケータイを配布。勤務開始時と終了時に、自分のネームカードのQRコードをケータイで読み取るという仕組みで、タイムカードの役割を持たせている。
テレビでも、活用が進んでいる。これまでにも、テレビの視聴者をネットに誘導することは、大きな課題とされてきた。そのための方法としては、画面にURLや検索キーワードを表示するといったものがあったが、これに「画面にQRコードを表示する」という方法が広がりを見せている。
例えばフジテレビが毎週土曜日に放送しているミニ情報番組「満天笑店」では、2010年3月13日の放送から3回にわたって、QRコードを活用した実験を行っている。具体的には、番組の最後にQRコードを20秒程度表示。そのQRコードをケータイで読み込むと、懸賞企画に応募できる仕組みだ。初回は、新潟県魚沼産のコシヒカリ2キロが60人にあたる。
ケータイ経由なら「誰に届いているか」が分かる
従来もQRコードを使って番組ウェブサイトに誘導するといった試みは行われていたが、今回の実験ではさらに一歩踏み込んで、QRコードを広告企画に応用できるかをみるのが狙いとみられる。
IT業界に詳しいジャーナリストの井上トシユキさんは
「今や『部屋にいる限りテレビがある』という状況ですし、ケータイは普及しきっています。中高年もケータイも使い方を覚えてきているので、(テレビ局は)『幅広い年齢層を取り込める』と思ったのではないでしょうか。今後は、データ放送と連携しながら『ワンセグを見ながら注文する』といったことも出来るようになるのではないでしょうか」
と、テレビとQRコード活用の今後の可能性に期待を寄せている。さらに、
「これまでの視聴率・聴取率といった基準は、実は『誰に届いているか』が大ざっぱにしか分かりません。その点、ケータイ経由であれば、ターゲットに精密にリーチできるようになるのではないでしょうか」
と、マーケティングツールとしても有望だとの見方をしてもいる。