トヨタリコール問題で「顧客目線が欠けている」
破綻したJALの再建問題の迷走も記憶に新しい。「法的整理は考えていない」「法的整理を否定したことはない」と揺れ、そのたびに株式市場を右往左往させた。自身の親しい関係者を中心に構成した「タスクフォース」に再建計画を練らせようと、法的裏づけもなく独走した挙句、タスクフォースは解散、公的な産業再生支援機構の支援を受けることになった。このため、タスクフォースに資産査定などをさせた1カ月を無駄に空費し、「経営悪化を加速させた」(JAL関係者)との批判が上がった。しかも、タスクフォースは査定の実務などの経費が10億円程度かかったといわれる。前原氏の肝いりだったにもかかわらず、JALが負担することになり、この分も結果的にJALの負債を増やした。
トヨタ自動車のリコール問題でも、前原氏は会見で「顧客目線が欠けている」(2月5日)と語ったことに、「世論に便乗してカッコつけるより、国益を考えるべきだ」(経済団体関係者)との批判がある。ブレーキの効きの遅れを「運転者の感覚の問題」と会見で語るなどトヨタの認識の甘さがあったとはいえ、「米国では運輸長官が議会公聴会でトヨタ車の『運転をやめるように』と口を滑らせたように、官民挙げてのトヨタ叩き状態」(同)という中で、日本のトップメーカーをさらに追い詰めるような発言を閣僚がするのは問題だ、というわけだ。ちなみにトヨタ労組出身の直嶋正行経済産業相は、「今回は比較的速い判断。これを糧にユーザーの信頼を回復し、不信を買わない対応をしてほしい」(9日の会見)とトヨタをかばったのとは好対照だ。
政治とカネの問題で、視界がなかなか開けない鳩山政権。首相自身もさることながら、脇を固める閣僚の人気は内閣の大きな支えだが、政策遂行には危うさがつきまとう。