全身包帯姿の武将大谷吉継 ハンセン病差別につながるのか

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   全身包帯姿で、他人も不幸に陥れようとする――。こんなキャラの戦国武将ゲームが、ネット上で論議を巻き起こしている。実在した武将でハンセン病だったと信じられていることから、その是非を巡って騒ぎになっているのだ。

   戦国武将キャラが登場するのは、大手ゲームメーカー「カプコン」が2010年夏に発売するゲームソフト「戦国BASARA3」だ。武将の名前は「大谷吉継」で、関ヶ原の戦いで石田三成率いる西軍に加わったことで知られる。

ハンセン病学会が、差別招く表現回避を要望

ゲームの武将キャラが波紋
ゲームの武将キャラが波紋

   大谷吉継は、ハンセン病を患っており、崩れた顔を白い布で覆っていたと伝えられている。

   戦国BASARA3の公式サイトを見ると、ゲーム中の吉継は、全身に包帯を巻いているように見える。そして、サイト中の登場人物紹介には、次のようなことが書かれているのだ。

「重い病に侵されており、豊臣秀吉存命の時代より常に周囲から疎んじられてきた。己の身のみに降りかかった不幸を許容することができず、すべての人間を不幸に陥れることを目的に、天下分け目の戦を起こすため暗躍する」

   これに対し、日本ハンセン病学会は2010年2月16日付で、学会サイト上にカプコン社長あての要望書を載せた。そこでは、ゲームには遊び的な要素も入っているとしながらも、不幸から他人を呪うような言動や全身の包帯姿があると指摘。患者らの人権や心情を深く傷つける可能性があるとして、「誤解や偏見・差別を招くような表現を避けていただくよう要望いたします」と結んでいる。

   こうした指摘について、ネット上では、理解する声も多い。2ちゃんねるでは、「これは文句も出るわ」「もっと心のきれいなキャラにしたら文句は無かったな」といった書き込みが相次いでいる。一方で、異論も多く見られる。「いまどきハンセン病を勘違いするやつなんていないだろ」「こんなもん言い出したら昔話系はガンガンアウトじゃねーか」といったものだ。

異論も考えて、抗議などはせず

   こうした異論については、どう考えたらいいのか。

   日本ハンセン病学会の庶務幹事をしている石井則久・国立感染症研究所ハンセン病研究センター長は、異論も考えて、抗議や販売中止要求ではない形にしたと説明する。

「ネット上などでは、反論もあるのは分かります。一般の方には、『別に構わないじゃないか』『ゲームの範囲内に過ぎない』などと、いろいろな意見があることでしょう。こうしたことを考えて、要望書という形にしました。質問の形にもしていませんので、カプコン側が要望書をどのように認識するか、だと思っています」

   ゲーム内容を知ったのは、一般の人から、「こんなゲームがありますが、学会としてはどうしますか」と聞かれたことからだという。そして、学会内部で検討した結果、要望書の形に落ち着いたとしている。

   カプコンの広報・IR室では、「今の時点では、要望書が会社に届いていませんので、受け取ったうえでないと、回答は難しいです。受け取ったうえで、対応を検討していきます」と答えている。

   要望書とは別に、ハンセン病差別につながるかどうかについて聞いても、「要望書とリンクして受け止められてしまいますので、やはり要望書の内容を確認した後でないと、安易にコメントできません」と言っている。

   ちなみに、大谷吉継は、他人も不幸に陥れようとする側面があったかについてはよく分からないものの、ある歴史書によれば、広く民衆を愛し、善悪の別もわきまえていた賢人とされている。

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