異業種同士のコラボレーションが注目される中、スポーツブランドのアディダスと、清涼飲料のコカ・コーラが手を携え、スポーツ愛好家やアスリートを支援していくことになった。2010年2月18日、両社が記者会見して発表した。新たなスポーツ飲料を共同開発して売り出すなど、業界の「巨人」が協力して「スポーツ後の疲労を残さないことで、スポーツ愛好家やアスリートのパフォーマンスを最大限に引き出していく」としている。
アディダスとコカ・コーラは「スポーツ後の疲労」に着目した。走ったあとなどの疲れをできるだけ早く取り除くためには、アミノ酸が2つ以上結合した大豆ペプチドを摂取することが効果的とされる。大豆ペプチドは普通に摂取しても体内に吸収されにくいが、成長ホルモンが分泌されるスポーツ後30分以内に摂取すると体内への吸収がよくなって、効果が発揮される。
大豆ペプチドを配合した新しいスポーツドリンク
グローバルブランドである両社が世界で初めて共同開発した飲料「アクエリアス プロ リカバリーショット」はこの大豆ペプチド(1100ミリグラム)を配合した新しいスポーツドリンクで、アディダスの契約アドバイザーである中野ジェームス修一氏は、「休養やサプリメントを効果的にとることで重要なことはタイミングと継続。運動終了後の30分以内は成長ホルモンが分泌されるので大豆ペプチドの吸収もいい。しかも、『リカバリーショット』は飲みやすいので続けられる」とPRする。
「アクエリアス プロ リカバリーショット」は日本コカ・コーラが2010年3月8日に発売する。
一方、アディダスは東京・平河町に、皇居周辺を走るランナーの「拠点」となる施設「adidas RUNBASE」を、2月19日にオープンする。ロッカーやシャワーを完備するほか、自分にあったシューズ作りもできるなど、ランナーのレベルや目的にあった「走り」をフィジカル、メンタルの両面からサポートする施設だ。
今後はテレビCMやWEB、交通広告、雑誌などでも協働して取り組む。飲料の発売前には、東京マラソンEXPO2010(2月25~27日開催)やRUNBASEで「アクエリアス プロ リカバリーショット」の試飲サンプリングを実施。アディダスの直営店や同社の契約アスリートを起用したプロモーション活動など、両社の強みであるマーケティング力と販売ネットワークを生かした「コラボ」を展開していく。
コラボによって顧客層をお互いに補強し、新たな顧客も開拓
今回のコラボについて、アディダス・ジャパン・スポーツパフォーマンス事業本部長のデイブ・トーマス氏は、「今回、他に先がけて新製品の開発に成功した。スポーツドリンクはアスリートをサポートするうえで欠かせないし、人気ブランドと組めたことは素晴らしいこと。アディダスはアパレルやフットウェアで外側から、アクエリアスはスポーツ飲料で体に不可欠な水分補給で内側から、一緒にスポーツする人を応援していきたい。」と話した。
また、日本コカ・コーラのバルガーニア・サンティアゴ副社長も「今回のグローバルなパートナーシップを誇りに思う。長年にわたってスポーツ後の疲労回復を体の中からサポートすることに注目してきたことが実を結んだ。今後もお互いの強みを生かして、スポーツ愛好家やアスリートに向けた、真の革新を続けていきたい」と述べた。
企業のコラボレーションが増えている背景には、広告宣伝や調査・研究などで相乗効果が見込めることがある。広告宣伝費が抑えられる半面、話題性が高いのでPR効果は大きい。さらに、マーケティング面では、弱点になっている顧客層をお互いに補強したり、新たな顧客を開拓できるメリットも見込める。
ファーストリテイリング傘下のユニクロが2003年から展開している企業のロゴ入りTシャツは、ユニクロのTシャツを着た若者が町を歩くだけで、ロゴマークを提供した企業にとっては宣伝の場になる。
ユニクロが、企業に呼びかけて実現しているケースが多く、提携先は毎年異なるが、2009年は日産自動車やフォルクスワーゲン、パイロット万年筆、ティッシュペーパーの王子ネピアなど44社と提携した。2010年は未定だが、ユニクロにとっても「定番の人気商品になっている」(ファーストリテイリング)という。
世界企業のビッグネーム同士であれば、なお効果は大きい。マクドナルドと任天堂が組んで、マックの店内で「ニンテンドーDS」を使って独自のコンテンツを楽しめるサービスがあるほか、マクドナルドはコカ・コーラともワールドワイドで「パートナーシップ」を結んでいる。