インターネットの掲示板「2ちゃんねる」に対する損害賠償金の回収に成功した、と新潟の弁護士がホームページで公表した。2ちゃんねるの書き込みをめぐっては、名誉毀損やプライバシー侵害などで多数の裁判が起こされている。管理人に損害賠償を命じる判決も出ているが、支払に応じないため賠償金を回収できないことが多かった。今回は珍しいケースとして注目されている。
西村氏への「出版許諾料」を原告に支払うことに
2ちゃんねる側からの取立てに成功したのは、新潟合同法律事務所の齋藤裕弁護士。2010年1月27日に事務所のホームページに経緯を報告する文章を掲載した。J-CASTニュースは齋藤弁護士に取材し、さらに詳しい説明を聞いた。
それによると、齋藤弁護士は2ちゃんねるの書き込みで権利侵害を受けた人の代理人として、当時の管理人だった「ひろゆき」こと西村博之氏に裁判を起こし、損害賠償命令の判決を得た。
しかし西村氏が賠償金の支払に応じないため、印税債権を差し押さえることにした。齋藤弁護士は、2ちゃんねるの書き込みをもとにした『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』という書籍が新潮社から出版されていることに着目。同社から西村氏に対して出版許諾料が支払われているのではないかとにらんで、新潮社にその許諾料を支払うように求めた。
ところが新潮社は、印税債権を持っているのは西村氏ではなく「パケットモンスター」という別の会社であるとして支払を拒否した。そこで今度は新潮社に対して出版許諾料の支払いを求める訴訟を東京地裁に起こし、「西村氏とパケットモンスターは実質的には同一視できる」という主張を展開した。
その結果、東京地裁から和解勧告が出て、新潮社が出版許諾料の一部を原告側に支払うことで和解が成立したのだ。裁判官が「名目上印税債権を持っているのはパケットモンスター社だが、実際に印税債権を持っているのは西村氏」という判断を示したことが、このような解決につながったという。