広報体制一新が影響?
会見が始まって1時間が経過した時点で、会見場からは、ひときわ厳しい質問が飛んだ。「米国議会での公聴会には出席するのか」という再三の質問に対して、明確に回答しなかったことを受けてのもので、朝日新聞シニアライターの山田厚史さんが、このように詰め寄った。
「米国に行って、何故、議会に向かい合い、プレスの前に立ち、消費者に、社長から『トヨタはこういう風にやっている』と説明しないのか。私が米国の消費者ならば『トヨタの大将が来るのであれば、我々に何か言ってくれるのではないか』と思うはず。1番偉い人が説明してくれると期待するはず」
これに対して、豊田社長は
「いいアドバイスをいただいた。決して米国に行かないと言っている訳ではない」
と釈明。さらに山田さんが
「米国の消費者の前で説明をするという覚悟はあるのか。社長が、この問題が重大だと認識されたのはいつか」
と問いかけると、豊田社長は
「現在、危機的状況を認識してやっているので、是非とも今後を見て欲しい」
と、やはりあいまいな答えしか返せなかった。山田さんはイライラした様子で
「いつ危機的状況だと分かったんですか? それは(米国)運輸省の人が(09年末に)来た前ですか後ですか」
と問い詰めると、
「いつと言われても……、なかなかアレでございますが、現在は危機的状況だと思っています」
と、しどろもどろな様子になってしまった。
「トヨタモデル」(講談社現代新書)などの著書がある経済ジャーナリストの阿部和義さんは、社長就任による社内体制の変化が影響しているとみており、
「09年に豊田社長が就任してから、『奥田(碩)-張(富士夫)-渡辺(捷昭)』という歴代社長の下での社内体制を一新しています。それは広報も例外ではなく、過去の危機管理などに関するノウハウが受け継がれていないのだと思います。刷新するということには裏表があるものなので、ある意味では当たり前です。安定するまでは時間が必要なのでは」
と話している。