「政治とカネ」に関する新たな疑惑が鳩山政権を揺さぶっている。2009年夏の総選挙で当選した小林千代美衆院議員(北海道5区)を支援した北海道教職員組合(北教組)が政治資金規正法違反の疑いで家宅捜索を受けたのだ。鳩山首相や小沢幹事長の政治資金をめぐる問題で内閣支持率が低下するなか、さらなる打撃となりそうだ。
北教組から1600万円が渡っていた?
捜査のメスが入ったのは2010年2月15日。札幌地検特別刑事部が北組合本部を政治資金規正違反容疑で家宅捜査した。各紙報道によると、2008年冬ごろから09年夏ごろにかけて、北教組側から計1600万円が小林陣営に提供されたとみられている。札幌地検はこの資金提供が、政治家個人への企業・団体献金を禁じた政治資金規正法に違反した疑いがあるとみているという。
小林氏が当選した北海道5区は自民党の町村信孝元官房長官の地盤。小林氏は3回続けて小選挙区で敗れたが、09年夏の選挙では「政権交代」の追い風を受けて、ついに町村氏を破った。そのときに小林陣営を強力にバックアップしたのが北教組で、選対委員長を09年6月まで務めたのも北教組の委員長(当時)だった。
2月17日の朝日新聞には、小林陣営の会計担当者のコメントが掲載された。それによると、会計担当者は北教組委員長から資金を受け取っていたことを認め、
「帳簿に載せられない金があった。やばい金だと分かって意図的に(虚偽記載)をやった」
と話しているという。ただ、小林氏は北教組からの資金提供について
「報道されている内容は全く存じ上げない」
と自らの関与を否定している。
鳩山首相「いまこそ企業・団体献金を全面禁止するとき」
鳩山由紀夫首相や小沢一郎幹事長の「政治とカネ」をめぐる問題が民主党政権への不信感を高めてきた。今回の小林議員の疑惑も、野党に格好の攻撃材料を与えることになるのは明らかだ。
2月17日に国会で開かれた党首討論では、さっそく自民党の谷垣禎一総裁がこの事件を取り上げ、民主党の対応を問いただした。鳩山首相は事件そのものについては
「いま捜査が進められているところなので、捜査を見守っていきたい」
と具体的な答弁をさけた。そのうえで
「このようなことが起きないようにするためには、企業・団体献金を政党も含めて全面的に禁止しなければならない。そのようなことをいまこそ実現するときが来たのではないかと思っている。ぜひ自民党の谷垣総裁にも、企業・団体の禁止にむけて努力をお願いしたい」
と切り返し、企業・団体献金の全面禁止に向けた協力をよびかけた。民主党では、海江田万里衆院議員を中心とする政治資金対策チームが、企業・団体献金の禁止を盛り込んだ政治資金規正法改正案をまとめて、今国会に提案する方針を固めている。