「2月はトヨタと我々の将来を決める大事な月になった」
サービス工場におけるリコール対応の修理作業は、ABSを制御するコンピュータプログラムを書き換えるだけで、5~10分で終わる。だがトヨタの品質が問われていることもあり、他の不具合が生じているかどうかチェックすることも加えることで1台あたり40分の作業時間になるという。この時間はトヨタがディーラー店舗で展開してきた短時間車検と同程度の時間が掛かることを意味している。
リコール対応によって車検1台分の作業時間が必要な車の入庫が新たに発生することで、ディーラーのサービス部門は入庫台数の予測を大きく上方修正しなければならなくなった。しかもプリウスなどのハイブリッド車のユーザーは、様々なメーカーの車から乗り換えたユーザーが数多く存在する。「トヨタだから心配はしていない」とするユーザーの声がディーラーに多く寄せられているようだが、ディーラーのサービス工場が忙しいからと機械的に受け入れて作業を進めていると大きな問題が生じることもある。
他メーカーからトヨタやレクサスに乗り換えたユーザーの中には、ディーラーの対応に不満を抱く者が現れることも予測される。このため国内トヨタ陣営は、3月にリコール対応が集中することだけは避けなければならないと考えた。ディーラーにとっては、リコール対応分の整備代金をトヨタが支払うことで一時的に売り上げが上がるが、その対応での接客応対を一歩間違えば整備作業依頼や新車代替などの需要を生み出す顧客を失うことにもなりかねない。
国土交通省にリコールを届け出た9日に行われた記者会見で豊田社長は「販売店と協力して信頼回復に努める」と語り、ディーラーはリコール対象車のユーザーに対して、リコールの届出が行われる前から全ユーザーへの連絡を取るなどの対応に万全を期してきた。迅速なユーザーへの対応は商売の基本であり、収益源を守るために不可欠だ。
だが2月中にほとんどのリコール対象車の修理を終えなければ、系列ディーラーが販売の追い込みをかける3月の新車販売台数をも左右することになる。系列ディーラーの経営者の一人は「3月は今年度の経営実績を決める大事な1カ月。だが2月はトヨタと我々の将来を決める大事な月になった」と、大きな危機感を抱きながらリコール対応に当たっていることを明かした。