トヨタ自動車の系列ディーラーによる「プリウス」などハイブリッド車4車種のリコール(回収・無償修理)対応が2010年2月10日に始まった。対象車種は4車種合計で22万3000台。リコール制度では3カ月で90%以上の処置を終えることが求められているが、前日の9日にトヨタ東京本社で記者会見を開いた豊田章男社長は「それ以上のスピードでやりたい」と、トヨタ陣営が迅速な対応を目指していることを強調した。
一方で系列ディーラーのサービス工場は、1年間のうちで車検・点検入庫の作業台数が最も多くなる年度末を迎えている。リコール対応による仕事量の上乗せは、各ディーラーにとって大きな試練となっている。
年度末迎えサービス工場はフル稼働の状態
今回のリコール対象車種は、同じブレーキシステムを採用しているトヨタブランドの「プリウス」(約20万台)、「SAI」(約1万1000台)、「プリウスPHV」(約150台)と、レクサスブランドの「HS250h」(約1万2000台)。保安基準の適合範囲内の状態でリコールを行うことは珍しいが、この4車種のリコール対応に国内約5000店の系列ディーラー店舗が一斉に取り組み始めた。
系列ディーラーが目指しているのは「3カ月で90%以上というような悠長なことは言っていられない。2月中に対象車のほとんどの修理を完了する」(首都圏の系列ディーラー経営者)ことだ。リコール制度で定めた期間と4月下旬からのゴールデンウィークでの店舗の休業を考えれば、90%の台数の作業をゴールデンウイーク前までに終えれば済む。だが、のんびりと作業をこなしていては、トヨタの信頼に傷が付くだけでなく、ディーラーに対する評価にも大きな影響がでることになる。
ディーラーにとって3月は、年度末の大事な販売商戦時期にあたる。当然、販売台数が増える時期であるからこそ、保有台数の中でサービス工場に入庫する車検・点検の台数も多くなる。エコカーの減税や補助金があることで車検時期を迎えた車を新車の買い替えるユーザー数は昨年より多いとされているが、これまでの保有台数をベースに単純計算すると、3月には最大130万台のトヨタ車が車検を迎えることになる。サービス工場はフル稼働の状態が続き、仮にリコール対象車の入庫が3月に集中すると、一部のサービス工場では受け入れ能力を超えることも想定されるという。店舗が整備作業待ちの車で溢れ、新車を購入しようと店舗を訪れるユーザーへの対応に影響する可能性もある。