携帯電話やメールに匹敵するコミュニケーション革命といわれるネットサービス「ツイッター(Twitter)」。いまのところ日本の利用者は首都圏に集中しているが、地方でも商店街の活性化や観光情報のPRに活用しようという動きが広がりつつある。ツイッターは地方を変えることができるだろうか。
「ツイッター+ラジオ+電子看板」で街全体をPR
ちょっとした「つぶやき」のような情報を誰でも簡単に発信できるツイッターは日に日に影響力を増しており、国内利用者は500万人を超えたともいわれる。しかしその分布は全国均一というわけではない。アスキー総研が2009年12月末に発表した利用実態調査によれば、利用者の29.5%は東京に集中している。神奈川・千葉・埼玉を合わせると50%を超える「首都圏偏在型」のサービスなのだ。
だが、携帯電話やメールがそうであったように、地方へ広がる兆しもみられる。福岡市の中心街・大名地区では2010年2月12日から、ツイッターを使ったショッピング街活性化の試みが始まった。14日までの3日間、同地区の飲食店や洋服店など約60店がセール情報や店内の様子をツイッターに流し、地区全体でPRするプロジェクトを実施している。
各店舗のオーナーやスタッフは「#daimyo」というハッシュタグ(キーワード)をつけてツイッターに情報を投稿する。利用者はそのハッシュタグを検索することで、大名地区でプロジェクトに参加している店のつぶやきが一覧できる仕組みだ。店を訪れた客も同様のルールでつぶやけば、簡単にプロジェクトに参加できる。
さらに、コミュニティラジオ局の天神エフエムが放送でプロジェクトについて紹介したり、街頭に設置されたデジタルサイネージ(電子看板)で参加店舗をPRしたりして、ネットと組み合わせたメディアミックスをはかっているのが特徴だ。
「九州でツイッターはまだマイナー」とのことで、大名地区の店主たちも今回初めてつぶやいたという人が多い。福岡県とともにプロジェクトを主催する天神・大名WiFi化協議会の杉山隆志事務局長は
「大名地区は個人経営の店が多いので、宣伝にお金をかけられない。そんな小さな店が気軽に使える広告を一緒に作り上げていきたい」
とプロジェクトの狙いを語る。
若者たちが始めた街おこしプロジェクト「ヨコッター」
同じ九州の宮崎市では一足早く、2010年1月からツイッターを使った商店街の活性化プロジェクトがスタートしている。宮崎商工会議所(kaigisyo)が運営する情報サイト「M-Town.info」のトップページに商店街の店主らのつぶやきを一覧表示させている。
「ツイッターのリアルタイム性を生かして、ランチ情報を昼前に流したりしている。今はちょっと気を抜くと奈落の底という時代だが、東京の高円寺ルック商店街(koenjilook)など他地域の商店街と励ましあいながらやっている」
と同会議所の杉田剛さん。今後はネット中継サービスのユーストリーム(Ustream)を活用して日曜市やファッションショーといったイベントを生中継するなど、新しい切り口の情報発信を試していきたいという。
北でもツイッターを使った街おこしが始まった。秋田県の横手市役所(yokote_city)は2月10日から観光情報や行政情報をツイッターで流している。2月13日から16日まで、幻想的なかまくらで知られる「横手の雪まつり」が開催されるのにあわせてスタートさせた。
きっかけは、横手出身の若者たちが始めたプロジェクト「Yokotter(ヨコッター)」だ。ヨコッターはツイッターで街おこしをしようという取り組みで、09年12月から活動を開始した。「#yokote」などのハッシュタグを使ってつぶやかれた「横手情報」がツイッター上で一覧できるようにしたほか、公式サイトを作ってツイッターの活用を市民や出身者に呼びかけた。キャッチフレーズは
「あなたのつぶやきで横手の街が変わっていく!」
2月になると、ヨコッターの代表者らが市役所を訪れてツイッターのメリットを市長に説明。市役所でのツイッター開始にこぎつけた。現在は経営企画課や広報課の職員5人が交代でつぶやいている。
最初のつぶやきを投稿した同市経営企画課副主幹の村田清和さんは、それまでツイッターを閲覧したことはあったが、自分でつぶやくことはなかった。周りにもツイッターを利用している人はほとんどいないという。それでもツイッターを開始してから2日間でフォロワー(読者)が150人を超え、ツイッターのスピード感を実感した。村田さんは
「これまでは市のホームページに情報をアップしても『見てください』とアピールする場がなかった。若い人は市報を配っても読まないことが多いので、ツイッターを使うことで、市内定住のための補助制度などいろいろな施策情報を知ってもらうきっかけになればありがたい」
と話している。