全米で17万人以上がトヨタで働く
ところが、このところ、バッシングが一転、トヨタを擁護する動きも相次いで報じられるようになった。
2010年2月12日の新聞各紙によると、トヨタの工場がある米ケンタッキー、インディアナ、アラバマと工場予定地ミシシッピの4州の知事が、米議会などに連名で書簡を送り、「トヨタ批判は不公平だ」などと主張している。リコール対応について、「ほかのメーカーにはない自主的なものだった」とまで持ち上げ、トヨタが利益よりも安全を優先していると強調したというのだ。
さらに、米メディアでは、トヨタ車の購入を勧めるような記事まで出るようになった。ニューヨーク・タイムズ紙は11日、「トヨタ車を買うには絶好の機会?」との見出しのニュースを書いた。記事では、リコール問題での値下がりや各地域でのディスカウントで消費者が恩恵を受けるかもしれないと指摘している。
擁護論が出てきた背景には、トヨタの生産工場が今や全米に広がっていることがある。ディーラーを含めてアメリカ全体で17万人以上がトヨタで働いているといい、各地域にとっては、雇用削減や工場閉鎖などが起これば死活問題につながるからだ。米フォックスの11日付サイト記事は、各州政府がリコール問題の地域経済への悪影響を心配して擁護に回っているという事情を明かしている。
保護主義が先鋭化したのは、輸出が主力だった過去のことだ。今や、アメリカで販売されるトヨタ車の7割ほどが、米国内の工場で生産されているのだ。
アメリカでは、国内メーカーに配慮する一方で、地域のことも考えないといけない。こんな利益の相反するジレンマを抱えているようだ。
トヨタの豊田社長は、近く訪米して、リコール問題について説明すると報じられている。アメリカ国内では、今度はどのような反応が出るのだろうか。