サントリー・キリン合併破談 「丁々発止」の真相

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   国内食品最大手のキリンホールディングスと同2位のサントリーホールディングスの経営統合交渉は2010年2月8日、両社の統合比率などをめぐり折り合いがつかず、決裂した。両社は2011年春の経営統合を目指し、昨夏から本格交渉を進めてきた。しかし、創業家が株式の9割近くを握る非上場会社のサントリーと、旧三菱財閥の流れを汲む上場会社のキリンでは企業文化が異なり、その差を埋めることができなかった。

   両社の資産査定の結果、キリンは統合比率を「キリン1に対してサントリー0.5程度」と主張したが、サントリーは「キリン1に対してサントリー0.9程度」とし、創業家が影響力を保持することを求めた。サントリーは最終的にキリンが譲歩するだろうと楽観していたようだが、キリンは10日に決算発表を控え、「これ以上、株主に説明ができない交渉はすべきでない」と判断したようだ。

持久戦で有利に進める予定だったサントリー

   経営統合交渉を持久戦で有利に進める予定だったサントリーにとって、キリンの早急とも言える最後通告は大きな誤算となった。国内の食品2強による「世界に通用する巨大食品メーカー」の誕生は幻となった。

   非上場会社のサントリーは、上場会社のキリンと新たな持ち株会社「キリンサントリーホールディングス」(仮称)をつくり、サントリーのオーナー一族が新会社の発行済み株式の3分の1超を握ることで、経営の拒否権を確保するのが目的だった。外資などからの乗っ取りを防ぎ、安定した経営基盤を確保するには、創業家が引き続き、一定の影響力を保持すべきだというのがサントリーの考えだった。

   対するキリンにとっては、サントリーの創業家に3分の1超の株式を握られては、経営の自由度を確保できず、実質的に主導権をサントリーに握られ続けることになるという警戒感が強かったようだ。

   サントリー首脳は交渉決裂前の2月初旬、統合交渉について「お互いにそれぞれ言いたいことを言っている。こちらは時間をかけてよいと思っているが、キリンはパブリックカンパニー(上場会社)なのでどうなるか」「今は丁々発止やっている。最後はキリンが譲歩するしかない。向こうが言い張ったら、しょうがない」などと、楽観的な見方を示していた。

オーナー一族が「物言わぬ株主」であると確約するよう求める?

   キリンの加藤壹康社長は交渉決裂後の会見で、決裂の理由について「統合した後の新会社が公開会社であることを前提に、どのような経営を行っていくのかという点で両社の認識が一致しなかった」「新たな統合会社は上場会社として経営の独立性、透明性をしっかり担保し、顧客、株主、新会社の従業員から理解、賛同してもらえないと考えた」と述べ、暗にサントリー側の要求が過大だったことを批判した。キリン側が、サントリーのオーナー一族の3分の1超を保有しても、「物言わぬ株主」であると確約するよう求め、サントリー側が拒否したともいわれる。

   加藤社長は「交渉を進めていくうちに当初とは異なった要望や見解が持ち上がって、双方真摯に協議したが、溝が埋まらなかった」とも述べ、交渉決裂が単に統合比率だけの問題でなかったとの見方を示唆した。

   これに対し、キリンと別に会見したサントリーの佐治信忠社長は「公開会社でも、ファミリーカンパニーのよいところとパブリックカンパニーのよいところを取るつもりだったが、キリンは『今のパブリックカンパニーでいたい』ということだったのかもしれない」「オーナー会社の良さはパブリックカンパニーにはなかなか理解できない。サントリーの111年の歴史、創業家と会社のかかわりを見てくれれば、わかってもらえると思った」などと漏らした。

   両社は今後、それぞれに海外を含む新たに提携先を模索すると見られるが、イメージダウンは否めない。

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