相談したことが取引先に漏れるのが怖い
ある地銀関係者によると、09年12月はふだんの約2倍にあたる600件強の相談が持ち込まれた。「応じるかどうかは別にして、返済猶予法によって貸出条件の変更がやりやすくなったのは確か」という。その半面「事業計画や資金繰り計画をきちんと整えてくるのはわずか」といい、企業の「本気度」がわからないとも話す。
前出の部品加工業者は、「相談を持ち込めば、何でも受け入れてくれるというわけではないし、相談したことが取引先に漏れることがリスクになる」と、「風評」を心配する。
多くの企業が複数の金融機関と取引しているが、返済猶予法では「他の金融機関から条件変更の申し入れがあった場合、借り手の同意を前提に、関係する金融機関が相互で連携すること」を求めている。
つまり、少なくとも取引のある金融機関には情報が漏れることになるし、また、「一部の借り入れだけ猶予してほしい」といった融通は利かなくなる。そうなると返済猶予を申し入れた金融機関以外からは、新規融資が受けられない可能性が出てくる。
金融機関に駆け込む前に、公認会計士や税理士に止められるケースも少なくなく、企業にとって返済猶予は「ギリギリの、最後の手段」(部品加工業者)なのだ。