ひと手間かける「体験消費」 「手作りキット」が大人気 

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   不景気で節約志向が高まり、消費者が物を買わなくなったと言われているなか、ひと手間かけて作る「手作りキット」が注目を集めている。完成品を買うよりも手ごろな上に、自分で作るという体験が思い出になり、今の消費者の「気分」にマッチしているようだ。

   自分でウエディングドレスを作れるキットも売られている。アプロージア(埼玉県川越市)が「手作りウエディング」の販売を始めたのは7年前。最近は「自分らしいドレスが着たい」という女性が増えていて、毎月4~7人分の注文が入る。

10万円以下でウエディングドレスができる

   ドレスの形はスカートがふんわりと広がる「プリンセス」、清楚な雰囲気の「Aライン」、すっきりとしたシルエットの「マーメイドライン」が基本で、オリジナルのデザインも可能だ。セットにはドレス生地、お客に合わせた型紙、糸やファスナーなどのパーツ、詳しいテキスト、実際に縫っているところを見られるDVDなどが含まれ、ミシンがあれば作れるようになっている。

   お客の6割が初心者だが、

「家庭科で習ってからミシンを触っていませんという人でも、テキストやDVDがあるので問題なく思い描いたドレスを作ることができます」

と店長の富岡まち子さんはいう。

   ほとんどの人がドレス本体で約2カ月、ビーズ、レースやコサージュをつけるのに大体1~3カ月でできる。富岡さんは、「初めての場合、余裕を持って半年前から取り掛かるのがいいでしょう」とアドバイスする。

   キットの価格は「プリンセス」が7万4800円、「Aライン」と「マーメイド」が7万9800円、「オリジナルデザイン」が8万9800円だ。いずれもスカート丈は床ぎりぎりの「フルレングス」で、後ろが長くなっている「トレーン」は5000円増しになる。

   レンタルドレスよりもお手ごろな上に、自分で作ることで思い出になる。富岡さんは、

「作るのは大変ですが、大変だからこそ仕上がった時の喜びは大きいです。お得なのは嬉しいおまけ、と言う感じでしょうか。洋裁上手なお母様と一緒に作る方も増えてきて、親子での思い出になりますよ。式に参加したゲストからの注文も増えていますし、ウエディングドレスには手作りという選択肢もあることが浸透してきたようです」

と話している。

入浴剤、ビール、燻製も簡単に作れる

   従来、手作りが難しいと思われていた入浴剤も簡単に作れる。バンダイナムコグループのバンプレストが09年11月に発売した「バスボムメーカー」は、丸くて爆弾のように見えることから「バスボム」と呼ばれている入浴剤を自分で作れる玩具だ。

   スーパーなどで手に入る重曹やクエン酸に抹茶やローズ、黒糖などを混ぜ合わせ、プレスするだけで簡単にバスボムができる。バスボム約4個分が作れる重曹600gとクエン酸300gが付いて、価格は4179円。

   その日の気分に合わせて香りや色を変えられるし、店で売っているバスボムを買うよりもリーズナブルだ。広報担当者によると、20歳代後半~30歳代女性にうけがよく、品切れしている店もある。

手作りキットが豊富に揃うのは東急ハンズ。手作りの燻製が楽しめるキット「いぶし処 燻家(スモークハウス)」(1260円)は、ゆで卵やチーズ、ちくわなど好きな食材を簡単にいぶすことができるもので、アウトドアでのニーズが高い。

   手軽に「手づくりビール」が楽しめる道具と材料のセット「ホームブルワリー フルセット」(1万2705円)も30歳代後半以上の男性を中心に売れている。作るのに2~3週間かかるので、待ち時間も含めて楽しみたいという人に向いているそうだ。

   オーブンで焼いて作る陶芸粘土「パジコ 手びねり入門セット」(1785円)は20~60歳代の幅広い層に人気が高い。「ろくろ」を使わず、粘土をこねて作るという手軽さがうけている。

   こうしたひと手間かける商品が売れているようだ。この動向は最近、「セルフ消費」と呼ばれている。東急ハンズ広報担当者は、

「手作りキットの売れ行きがいいのは、節約志向の高まりやエコブームが影響していると思います。簡単なものであれば完成品を買うよりも安くなりますし、作ること自体を楽しめてお得です。節約しながらも暮らしを楽しもうというお客さまが増えているようですね」

といっている。逆に、節約でもエコでもない商品は売れなくなっているそうだ。

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