「だれが貴乃花親方に入れたのか、これからヨーイドンの取材競争です」。朝日新聞がツイッター上でこうつぶやいたことに、異論が相次いでいる。取材活動で造反者が分かってしまい、無記名投票の意味がなくなるといった批判が多い。取材には真実を追求する役割があるが、どうなのか。
朝日が「ヨーイドンの取材競争」宣言をしたのは、貴乃花親方が2010年2月1日に日本相撲協会の理事に当選した直後だった。
朝日「筆足らずの面があり、誤解を与えた」
その1時間後には、同じツイッター上で、造反者に取材する意図とみられるつぶやきを更新した。「貴乃花親方に入れた人は何を期待しているのか。相撲界はこれからどうなるのか。明日の朝刊で、それを伝えられたらと思います」
ところが、取材競争の宣言後、ネット上で異論が相次ぐ事態に。キッチュの愛称で知られる放送タレントの松尾貴史さん(49)は、ツイッター上で「何でそんなアホなことするんですか?やめるべきです」と発言し、それが100人に引用のリツイートされる反響を呼んでいる。
松尾さんは、取材競争をすれば、何のための無記名投票か分からなくなると懸念を明かした。そして、結果として、相撲界の圧力に加担することになると批判している。
こうした反響に慌てたのか、朝日は宣言から4時間後にツイッター上で釈明した。「筆足らずの面があり、誤解を与えた」と言いながらも、その真意を説明している。
それによると、取材は「造反者捜し」が目的ではなく、なぜ貴乃花親方に入れたのかを造反者に聞くことで、相撲協会がどう変わるか分かるという。造反者の名前や動機を押さえることは取材の基本であり、そうしないと「ふわふわとした現実を前提に記事を書くことになります」と説明している。
メディアはみな相撲協会の味方ではと批判されたことについては、そのことを否定したうえで、「味方かどうかは次元の違う問題」としている。