就職氷河期の再来が言われ、会社説明会が学生の予約ですぐ満員になるケースが続出している。中には、申し込み開始から2分で埋まったという外資系証券会社もあり、予約用にiPhoneを購入する学生もいる。
「大丈夫だろうと思ったのが、うかつでした…」
悔しそうな表情でこう漏らすのは、早大法学部3年の男子学生(22)だ。
説明会の席の枠、東大生は多い?
この早大生は、金融系への就職を目指しており、ある外資系の有名証券会社にコンタクトした。すると、会社説明会を予約できる日時のお知らせメールが届いた。ところが、予約開始から1時間後に会社サイトから申し込もうとしたときには、すでに満員だったのだ。
「僕の友人は、開始から2分後に申し込みましたが、『もう満員だった』と嘆いていましたよ。説明会に出れば、社員の話などを聞いて、会社の強みなども分かるのですが…。出ないと、『どうしてわが社ですか?』と聞かれたとき、志望動機がなかなか言えません」
説明会に出ないと、採用試験を受けられない企業もあるという。その場合は、選考の土俵にも上がれないだけに深刻だ。
「大学のネームバリューによって、説明会の席の枠を変えているといううわさもあるんですよ。東大生ならいつもOKだが、日東駒専だとほとんど枠がないというような」
大手企業などは、説明会の予約を取るのも大変なのか。
リクルートの広報部は、「『数十分で席が埋まる』という話が学生からよく出ています。例年より予約が埋まるスピードが速いようです。人気のある企業ほどそうですね」と話す。また、就職情報会社のディスコでは、「どのくらいで席が埋まるのかは企業によって違うようですが、学生への調査では、『早く埋まるので枠を増やしてほしい』『説明会に参加することがエントリーの条件になっているので、予約取るのに一苦労している』との声が出ています」と言う。
携帯の着信音に神経ピリピリさせる毎日
なぜ会社説明会が、すぐ満員になるのか。
リクルートでは、「採用を減らして説明会の人数も絞っていることより、学生が苦労している先輩を見て、危機感や強いあせりを持っているからでは」とみる。ディスコの広報担当者も、同様な見方をしている。厳しい就職事情を考え、「とりあえず席を押さえておこう」という学生が多いため、人数が増えている可能性もあるという。
学生側も、席確保に、あの手この手で対応している様子だ。
ある有名私大の3年生男子(21)は、2010年1月上旬に、パソコンサイトも利用できるiPhoneを購入した。
携帯電話に直接、あるいはパソコンからの転送で、企業から説明会案内のメールが来る。ところが、説明会申し込みは、パソコンサイトからでないとできないことも多い。そこで、スマートフォンのiPhone利用を考えたわけだ。
ネットブックもあるが、起動に時間がかかったり、電車の中や授業中は見ることが難しかったりするという。
前出のディスコ担当者は、「合同企業説明会で、入場するのに携帯画面を見せてもらうのですが、iPhoneの学生が多いと聞いたことがあります」と明かす。
日本でiPhoneは、09年に前年より4倍ほども売れたとみられている。就職対策で買った人も多かったのかもしれない。
もちろん、買えばいいというわけにはいかない。前出の早大生は、こう訴える。
「お金がかかりますので、買っていません。パソコンから携帯にメールを転送させているほか、できる限りパソコンのある場所にいることを心がけています。しかし、すぐに申し込む必要がある見た者勝ちのメールもあるので、着信音に神経をピリピリさせている毎日です。メールが多すぎて携帯に来まくりなのもつらいので、企業は、説明会の枠を早く増やしてほしい」