年が明けて、有名企業の社長交代の発表が相次いでいる。東京ガス、第一生命保険、三菱商事、富士通などがすでに発表済みで、本命の順当な昇格、ダークホースの浮上など各社の事情で様々だ。今後は、三菱UFJフィナンシャル・グループ、伊藤忠商事、日産自動車などが注目される。とりわけ、今年最大の「目玉」になる可能性があるのがゴーン日産社長の去就だ。
東京ガスは4月1日付で、岡本毅副社長(62)が社長に昇格し、鳥原光憲社長(66)が会長に就く。「下馬評通りの順当人事」といわれる。
三菱UFJFG畔柳信雄社長は交替の可能性高い?
第一生命は4月1日に相互会社から株式会社に移行するのを機に、渡辺光一郎専務(56)が社長に昇格し、斎藤勝利社長(66)が代表権のある副会長に就く。渡辺氏は13人の取締役の中で若い方から5番目で、「世代交代」を印象付けるが、森田富治郎会長(69)は留任するとあって、実力会長の"重石"は外れない。
三菱商事は6月に小林健常務執行役員(60)が社長に上がり、小島順彦社長(68)が会長、佐々木幹夫会長(72)は取締役相談役に就く。小林健氏は船舶畑出身で、燃料部門の中原秀人常務執行役員(59)らを抑えての昇格だが、現在は金融事業部門を率いるなど新規部門を育てた実績が評価されたようだ。経団連次期会長人事にらみで遅れていたとの解説もあり、経団連会長に米倉弘昌住友化学会長(72)の就任が固まる過程で「三菱商事からの会長なし」を見極めて19日の社長交代発表になったのでは、との見方も聞かれる。
野副州旦前社長が健康上の理由で昨年9月に退任し、間塚道義会長(66)が社長も兼務していた富士通は、4月1日付で山本正己執行役員常務(56)が社長に昇格し、間塚氏は会長に専念する。山本氏は8人抜きの抜擢人事だ。
今後の注目の一番手は三菱UFJFGだ。畔柳信雄社長(68)は6月に就任6年で、交替の可能性は高いといわれる。三菱東京UFJ銀行の永易克典社長(62)が順当にFG社長も兼ねる形でトップに就く見通しだ。FG会長は旧UFJ出身の玉越良介氏(62)の留任か、畔柳氏が就くか、旧UFJ勢力の動向も見極めての判断になりそうだ。
ゴーン後任は志賀俊之COOが順当
伊藤忠も丹羽宇一郎会長(70)、小林栄三社長(61)体制が丸6年になり、交代の可能性が高そうだ。両氏がそれぞれ取締役相談役と会長に就く見込みだが、新社長候補として、高柳浩二常務(58)、菊地哲常務(57)らが下馬評にあがっている。ただ、ただ、小林氏がまだ若く、会長兼社長としてもう1期残る可能性も指摘されている。
日産が交代すれば、今年最大の"目玉人事"になるだろう。カルロス・ゴーン社長(55)は1999年6月に日産に出資した仏ルノーから送り込まれて最高執行責任者(COO)、2000年6月には社長になり、コストカッターぶりを発揮して業績をV字回復させたのは記憶に新しい。この6月で社長在任丸10年と「頃合」(業界関係者)との声が多い。ただ、ルノー本体の会長件最高経営責任者(CEO)を務めており、そのルノーの業績低迷など不確定要素も。交代するなら、後任は志賀俊之COO(56)が順当だが、西川広人副社長(56)を推す声もある。
このほか、6月で在任丸12年になる三井不動産の岩沙弘道社長(67)、同じく9年になるKDDIの小野寺正社長(61)=05年から会長も兼務=も長期政権だが、いまのところ交代のうわさは聞こえてこない。さらに超長期政権の鈴木修スズキ会長兼社長(79)、信越化学工業の金川千尋社長(83)らの動向も注目される。
リーマンショック後の景気低迷の下、後戻りできないグローバル化の進展と民主党政権誕生という難しい状況中で経営の舵をどう取るかが新トップの課題になる。