みかんの消費量が右肩下がりに落ち込んでいる。原因はライフスタイルの変化や輸入フルーツの増加などが考えられるという。中には、みかんの皮を剥くことが煩わしいからという人もいるようで、皮を剥いてある冷凍みかんも発売されている。
総務省統計局が公表している家計調査年報を見ると、みかんの消費量は、二人以上の世帯で1988年には年間約32kg、2008年には約15kgと20年間でほぼ半減したことがわかる。1個100gとすれば、約320個だったのが150個しか食べていないことになる。一年間の購入金額も一世帯当たり7205円だったのに対し、4713円と右肩下がりに落ち込んでいる。
消費量が落ちたのは「複合的な要因」
それはなぜか――。日本園芸農業協同組合連合会、松本務流通課長は「複合的な要因がある」と指摘する。
一つ目は、生活様式の変化だ。昔は、こたつの上にはみかんがあるのは当たり前の風景だった。ところが今は洋式化も進み、家族はテレビを囲んでソファーに並ぶようになった。必然的にみかんの置き場所が無くなってしまったのだ。また、かつては箱買いすることが多かったのが、近頃は核家族化で10個程度の袋入りが中心になっていることもある。そのせいで、みかんの購入機会、そして購入数が減ってしまったというわけだ。
二つ目は、果物の種類が増えたことだ。今では冬でも輸入果物、バナナやグレープフルーツなどもあり、選択の余地が増えてきた。また最近では、みかんの最大のライバルがイチゴという。たしかにスーパーでも、ブランドイチゴの「あまおう」「とちおとめ」が目に付くようになった。
みかんの産地で知られる静岡県。産業部農林業局みかん園芸室の担当者は、「若い人の果物離れも考えられます。果物全体に対しても言えますが、年配層では消費は多いのに、働き盛りの人、その子どもがみかんに接する機会が少ないようです」と話す。とりわけ子どもの場合はお菓子の影響もあるだろう、と言う。前出の松本さんも「何しろお菓子は宣伝力が大きいのに、果物は……」と声を落としている。
皮を剥いてある冷凍みかん発売
そして、他にも理由がありそうだ。NHKの報道番組「ニュースウオッチ9」がみかん消費落ち込み問題を取り上げた際、街の人の声を聞いたところ、「剥くのが面倒くさい」「みかんの皮を剥いたときに白い筋が爪に入るのがいやだ」といった意見があった。個人のブログを見るとたしかに、「私は剥くのが面倒であまり食べない」などといった書き込みが散見される。番組では手が汚れるというので、ティッシュペーパーを挟んで剥いている、という人もいた。
では、はじめから剥いたみかんを販売してはどうか――。そこに目をつけたのが福岡県の冷凍食品販売会社「八ちゃん堂」(福岡県みやま市)だ。皮を剥いてある冷凍みかん、その名も「むかん」を年明けに売り出した。
「本社がある、みやま市は県内ではみかんの産地として知られています。でも最近は出荷量が減り、農家の高齢化もあり、収益が伸びずという状況でした。地元を盛り上げようと開発したわけです。ネーミングはもちろんすぐに思いつきました」
商品化したのも、実際に剥くのが面倒だという声を聞いていたからだという。ネット通販「楽天市場」でも取り扱っており、こちらでは若い人からの反響が大きい。担当者は「年配の人には冷凍みかんは懐かしいものと思いますが、若い人には意外に新しいと感じているのでは」と期待を寄せている。
なお、今年のみかんは甘く、当たり年だと言われている。夏から秋にかけて乾燥した日が続いたために糖度が高まったそうだ。そして今の時期、生産地では、12月中旬頃にとれたものを倉庫で寝かせ熟成させた「貯蔵みかん」の出荷がピークを迎えている。