「ファストファッション」に負けた西武有楽町 閉店は銀座カジュアル化の象徴

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   セブン&アイグループ傘下の百貨店、西武有楽町店が2010年12月25日で閉鎖することが公表された。2008年秋のリーマンショック以降、業績が加速度的に悪化する百貨店業界では地方店を中心に閉鎖が相次いでいるが、西武有楽町店がある東京・銀座は国内外の有名ブランドが旗艦店を置く流行発信基地だけに、意味合いははるかに大きい。

   西武有楽町店がオープンしたのは1984年で、朝日新聞の旧東京本社跡地の再開発で建設された有楽町マリオン内に阪急百貨店とともに出店。三越、松屋、松坂屋など、どちらかといえば対象年齢層が高く、高級感のある銀座周辺の老舗百貨店に対抗し、若い女性向けのファッションや生活雑貨をそろえ、銀座の「若年化」の先頭に立った時期もある。

食品売り場閉鎖してファッションに特化したのがアダ?

   しかし、この数年の消費低迷を背景にした銀座の町並みの変化は、「情報発信基地」を標ぼうしてきた西武を素通りして進んだ感がある。

   銀座の目抜き通りである中央通り沿いに軒を連ねた海外高級ブランド店が相次ぎ撤退。ルイ・ヴィトンが旗艦店建設を見送り、その予定地に出店を決めたのは米カジュアル衣料のGAPだ。中央通り沿いには09年以降、H&M、アバクロンビー&フィッチ、フォーエバー21の海外勢が出店を決め、国内勝ち組の代表選手、ユニクロも大幅改装オープン。「ファストファッション」の集積地に一変しつつある。

   一方、西武有楽町店に近接する再開発用地には有楽町マルイが核テナントで入居するファッションビルが07年にオープン。三越、松屋などの老舗も名誉挽回を目指して大型改装を年内に完成予定で、競争はますます激しくなる一方。他の百貨店勢が、衣料品部門の不振を比較的好調な「デパ地下」の収益で補っている構図だが、対照的に、西武有楽町は95年に食品売り場を閉鎖してファッションに特化していたため、改革への時間稼ぎも出来なかった。

百貨店閉鎖の波は徐々に都心部にも押し寄せる

   セブン&アイは06年に現在のそごう・西武の前身であるミレニアムリテイリングを傘下に収め、百貨店事業に進出した。コンビニエンスストアやスーパーに加え、かつての小売りの雄を取り込むことで、あらゆる消費者層のニーズを汲み取る狙いだった。従来より低価格の商品を導入し、客の幅を広げることで収益を立て直す改革を進めているが、成功しているのは西武池袋店、横浜そごう、千葉そごう、神戸そごうといったターミナル駅に近い店舗が中心で、競合が激しい地域ではなお苦戦が続いている。セブン&アイグループの稼ぎ頭のセブン・イレブンもコンビニの飽和化で収益にかげりが見え、セブン&アイ全体に百貨店を支える余裕がなくなったともいえそうだ。

   百貨店業界では、09年5月に三越が池袋店(東京)を閉鎖、同8月末にはそごう心斎橋店(大阪)も閉店した。撤退の大波は徐々に都心部にも押し寄せている。消費者の節約志向の高まりによるカジュアル専門店の台頭、インターネットショッピング市場の拡大などの地殻変動はますます強くなっており、まだまだ閉鎖の動きが続きそうだ。

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