新型インフルエンザの感染拡大が心配されるなか、塩野義製薬が新しい抗インフルエンザ薬「ラピアクタ」を、2010年1月27日に売り出した。「タミフル」「リレンザ」に次ぐ新薬で、世界初の点滴剤として注目されている。
「ラピアクタ」の開発にかかわった長崎大学病院の河野茂院長は、「重症でなければ外来で、わずか1回15分間の点滴でタミフル5日間分と同等の効果があり、完治します」と話す。副作用も少なく、インフルエンザにかかると長引きやすい糖尿病や慢性呼吸器疾患などの重症患者や、小児も使いやすいという。
タミフルやリレンザと違い、初めての「国産」薬
09年来、猛威をふるっている新型インフルエンザだが、抗インフル薬としては、カプセルやドライシロップなど経口型の「タミフル」や、吸入して使用する「リレンザ」が、世界中で用いられてきた。
「ラピアクタ」は、タミフルやリレンザと同様に、インフルエンザウイルスの中に存在する「ノイラミニダーゼ」という物質を阻害することで治療する。タミフルやリレンザに次ぐ、第3のノイラミニダーゼ阻害薬であり、初めての「国産」薬だ。
長崎大学病院の河野院長は、「ラピアクタは点滴剤なので、予防よりも治療が目的です。しかし事前に投与することで予防できますし、通常の季節性インフルエンザだけでなく、新型にも、また試験段階では鳥インフルエンザにも効くことがわかっています」と話す。
インフルエンザの治療ではこれまで、患者の症状によっては投与した薬剤の血中濃度を高く維持することが必要な場合があり、経口剤や吸入剤では追加投与ができないこともあった。また、経口投与がむずかしい患者への対応策もなかった。
その点、ラピアクタは点滴剤なので、糖尿病などにかかっている重症患者にも繰り返し使える。他の薬を服用している患者について、シオノギは「ラピアクタは、他の薬剤との相互作用は起きにくく、臨床試験においても他の薬剤との相互作用による副作用は観察されていません」と説明している。