小沢一郎民主党幹事長が政治資金問題で検察から事情聴取を受け、直後にマスコミ向けに会見が開かれたが、その様子をいち早く伝えたのは、テレビではなく、フリーランスライターによるiPhoneからのネット中継だった。ボタン1つで簡単にできるといい、今後報道のあり方に大きな変化が起きる可能性がある。
2010年1月23日、小沢氏が自身の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡る問題で東京地検特捜部から事情聴取を受けた。聴取は14時から18時半まで4時間半にわたった。
通信環境さえ整えば中継可能
その後、同日20時過ぎに都内で会見が行われた。会場となったホテルに報道陣が詰めかけたが、テレビ局各社が出席し、現場で数台のカメラが回っていたにも関わらず、大手キー局で生中継が放送されることはなかった。そんな中、リアルタイムで現場の様子をいち早く伝えたのがフリーランスライター、畠山理仁(はたけやま みちよし)さんによるネット中継だ。
ネットを使った会見の生中継自体は、ニコニコ動画などでこれまでにも行われていたが、今回特徴的だったのが、一個人がカメラなどの撮影機器ではなく、iPhoneを使って中継をしたという点だ。
中継は動画共有サイト「USTREAM」を通して行われた。同サイトからは09年12月にiPhone向けソフトがリリースされている。ダウンロードするとiPhoneのカメラからネット生中継ができるというもので、通信環境が整った場所でならどこでも利用可能。しかも無料だ。
畠山さんは、会見が始まる少し前から中継を開始。動画を見ると、報道陣でごった返す様子がリアルに伝わってくる。約20分の会見も、一部途切れたもののしっかり中継。iPhone内蔵カメラのため画質は少々悪いが、小沢氏の音声はきちんと捉えているので、会見中継としては十分だ。
上杉隆氏「もはや記者クラブシステムが事実上破綻した」
この中継のURLを畠山さんがツイッターで知らせたところ、すぐに話題になり、
「スマートフォン1つで世界中に小沢一郎記者会見を中継できる。すばらしい時代になりましたね」
「オランダからも見させてもらっています。すごい!」
といったつぶやきが殺到。ネットでは革新的な出来事として捉えられたようだ。「記者クラブ問題」を積極的に扱ってきたジャーナリストの上杉隆さんもツイッターで
「輝けるフリーランスライターの畠山理仁さんが小沢会見動画をアップ。この同時性と共時性。もはや記者クラブシステムが事実上破綻した、と宣言してみる」
とコメントしている。
「加工されていない一次情報」増える
畠山さんはiPhoneによる会見中継は23日の小沢会見が初めてだった。
「ボタン1つ押すだけで生中継できるんです。これは押しちゃいますよね」
バッテリーの駆動時間に不安があったため、補助バッテリーにつないで会見に臨んだ。
「ニュースなどで報じられる内容は、生中継でない限り『編集』が加えられた後に提供されています。これは『生もの』ではありません。私はフリーランスにも オープン化された総務大臣記者会見にも参加していますが、『クロスオーナーシップ』の問題など、せっかく政治家が見解を話しているのに、なぜか大手メディ アが報じない場合もあるんです。これは国民にとって損なことではないでしょうか。
気軽にできるネット中継からも、政治家がどんなふるまいをしたのか、会場の雰囲気はどうだったのかということがわかります。どんな情報でも有権者の判断材料になるんです。加工していない、生の一時情報に触れたい人には喜んでもらえるのではと思います」
と話している。